2話 少女
新汰はしばらく固まった。俺を呼ぶ声がするのはわかっている。しかし鏡から呼ばれた経験がなかったのだ。いや他の人も無いだろう。
とりあえず俺は深呼吸をして鏡のほうを見る。相変わらず、鏡の向こう側では10歳くらいの少女が映っていて俺のことを呼んでいる。何度か鏡を伏せたり、無視したりしたら怒って俺のことを呼んでくる。流石に可哀そうと思ったのか、おれは口を開いた。
「お前、誰?」
「やっと反応した!アーシャだよ君の名前は?」
「俺は新汰だよ。アーシャはなんで俺の部屋にいるの?」
「ありきたりな質問だね。もうちょっと面白い質問はなかったの?」
「いや、面白い質問ってなんだよ。」
初対面の人というか、鏡に向かって話す内容は大体こんな感じだろうと俺は思っていた。
アーシャは腰くらいまで髪を伸ばしており、赤色の髪の色をしている。10歳くらいの少女ながらもすでに顔は整っている。
俺はアーシャと何を話そうか考えていると
「私は鏡の住人だよ。そっちの世界の色んな鏡の中に映ることが出来るの!」
「んー、それじゃあ鏡の中以外にもいけるのか?例えば、水たまりの反射とかだったりとか」
「水たまりがわかんないけど多分無理だよ!」
元気いっぱいに答えるアーシャ、水たまりを知らないことに驚きながら俺は机に置いてあったアルバムを取り出し、水たまりの写真をアーシャに見せた。
アーシャはすごく熱心に水たまりの写真を見て俺に感想を述べる。
「すごくきれい、、この絵の名前をみずたまりっていうの?」
鏡の世界では色々と現実世界と違う、俺はそのことをすぐ理解し話を続けた。
「そうだ、で、その水たまりを撮ったのはカメラっていう道具でわかるかはわからないが時間を切り取って絵にするみたいな、、そんな道具だ。」
アーシャは鈍い顔をして、写真をにらみ続けるがあまりわからなかったようで
「いまいちピンとはこないかなー。というか私がそっちに行ってカメラ?を見ればいい話だよね!」
俺は理解できなかったが、すぐ理解することになる。アーシャが突然鏡の中から出てくる。まるでホラー映画の貞子を彷彿とさせるような、まず最初に顔そして最後に足が出てきた。鏡の中の少女と話すだけでも夢なのかというほど驚きなのに、出てくるともなると俺は意識を失っていた。
最後に鏡の中の少女アーシャが「新汰!」と何回も叫んでいるのが聞こえた。