1話 鏡
新汰は呆れながら望のカメラを探していた。学校、公園、近くの海辺と散々望と一緒に歩き回ったが全然見つからない。もう誰かに奪われてネットオークションに売られているか、望が落としているのだろう。流石にもう諦めようと提案したが、
望は怒りながら「新汰がまじめにさがしてくれないからでしょ」こう言った。
俺は少し怒った表情を見せて
「いや、俺はまじめに探してるし、大事なカメラを無くす望が悪い。」
「あのカメラは頑張ってバイトして貯めて買ったカメラなの!だから絶対探す」
「お前、それを簡単に無くすなよ。」
口元が歪み、涙を溜めていた望を見てこれ以上は言わなかったが、正直言って俺が探す義理はないと思っている。しかし俺も人が良い。望が探し飽きるまで付き合うことに決めた。
気づけば夕方になっていた。流石に俺も疲れたので望に今日は諦めて帰ろうと告げ、望と一緒に帰り道を歩いていた。望は冷静になり
「さっきは怒ってごめん。探すの手伝ってくれているのに、、、」
「別にいいよ。明日もまた探そう。望が満足するまで付き合うよ。」
望は申し訳なさそうにこちらを見つめていた。あの顔を見たら他の人は知らないが俺は放っておけなくなってしまう。今の望との関係は決して恋人ではない。高校で仲良くなった友達なだけだ。カメラ好きという共通の趣味があったためよく一緒に遊んでいるに過ぎない。望は横暴なところがあるが決して人を放っておけない性格なのである。そして可愛い。望が俺のことをどう思っているのかわからないが、俺はそんな望が恥ずかしくて直接言えないが好きだ。
望と分かれ道に差し掛かった時に
「新汰明日また学校で!じゃ!」と笑顔で別れた。
俺も「じゃあな」と言い、家へと向かった。
家のドアを開け、母さんのことは無視して、俺は即座に部屋へと向かった。
また今日のように明日も望のカメラを探すのかとめんどくさくはあったが仕方がないと思いながらベッドで寝てしまっていた。
起きたのは深夜の0時だった。新汰はもう一度寝ようと試みたが体が完璧におきてしまっていた。一回横を向いてみると変な丸いものが置いてある。こんなもの置いた覚えが無かったというか、見覚えがなかった。
新汰は興味本位で変な丸いものを触ってみると手鏡だとわかった。女の子だったらまだしも男の俺が手鏡は絶対いらない。母さんの私物かと思い、その手鏡を手に取り部屋から持ち出そうとした所、部屋の何処かからか声が聞こえる。「おーい」という声だ。俺は立ち止まり考え、ある結論に至った。
「手鏡の方から聞こえるんだけど」
俺は勘違いだとそう思いながら恐る恐る手鏡の方を見ると、自分ではなく10歳くらいの女の子が写っていた。