1
「……ああ、そうだ。
こっちは無事トルスに到着してダルク・カルトの弔いも昨日、済ませた所だ」
と、受話器を片手に電話先の相手に声を発したのはゴルドーだった。
ゴルドー商会の二階。
廊下の一番奥にある社長室。
その社長室の自身の椅子にドッカと腰掛け、そうして話をしている。
部屋の中には、誰もいない。
入口の扉には鍵をかけているから、誰かに邪魔される心配も皆無だった。
電話先の主──レイジスがお悔やみの言葉をかけてくる。
何事もない時であれば、逆に苦く微妙な心持ちになっていたかもしれなかったが……。
今はそれよりも優先して考える事柄があった。
ゴルドーは話もそこそこにそちら側の話題へ話を切り替える。
「──それで、例の件だが。
今、うちのモンが向こうに行って調べてる。
こっちはそっちさんと違って商人なんでね。
内側に入り込んで薬の正体も出所も明らかにしてやる。
今ん所の概算だが、そう時間はいらなさそうだぜ」
ニヤリ、と悪い顔でゴルドーが言うのに、レイジスはこちらも電話の向こうで笑ったらしい。
「それは楽しみだ」と愉快そうに返してきた。
そうしてその笑いもそのままに「ところで、」と話を続けた。
「リッシュくんの様子はどうかな?
道中や墓参りで具合が悪くなったり倒れてしまったりしなかったか……とミーシャが心配しているんだが」
含み笑いで、問いかけてくる。
恐らく隣にミーシャがいて、話を聞きたがっているのだろう事がゴルドーにも容易に想像出来た。
全く、あんなヤローのどこがそんなにいいんだか。
思いつつゴルドーはレイジスと、そしてもう半分はミーシャへ言うつもりで答える。
「ああ、そっちも問題ナシだ。
まぁいつもより殊勝な顔つきはしてたがな。
こっちの事は心配いらねぇ。
嬢ちゃんにもそう伝えといてくれ」
言うとレイジスが「分かった」と返してくる。
ゴルドーはその後二言三言の簡単なやり取りを終え、そうしてレイジスとの電話を切ったのだった──。
◆◆◆◆◆
サーッと気持ちのいい風が辺りを突き抜ける。
俺は飛行船の操縦桿を両手に握り、どこまでも高く遠く、空を突き進んでいく。
空はくっきりと青く、気分は爽快だった。
だが次の瞬間、大きな黒い雲が辺りを取り囲む。
ゲッ、ヤベぇな……と思う間もなく稲妻が起こり、そして──……。




