表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

285/294

14

ゴルドーはダルクの前で一つ、手を合わせる。


ジュードも、それに倣って固く目を閉じ手を合わせた。


俺の足元から怖々ってぇ様子でダルクの姿を見ていた犬カバも──。


トコトコとゆっくりダルの前へやって来て、きゅぅぅと鳴いてダルのズボンの──丁度膝の辺りにぽて、と片前足を置く。


どーやらそいつが犬カバなりの供養の証らしい。


俺は──……。


ただただぼんやりと突っ立って、その光景を見ていた。


──手を合わせたら。


全てが終わっちまう。


バカみてぇだが、そんな気がした。


ゴルドーが、そしてジュードが合わせた手を解き“作業”に取り掛かる。


犬カバは、自分にゃやる事がねぇと分かってんだろう、そそそと俺の元まで戻って来──……かけたんだが。


その途中、コツンと前足で地面に落ちてた“何か”を蹴っちまったらしい。


「クヒ?」


小首を傾げ、その場に立ち止まった。


と、その犬カバが蹴っちまった“何か”がスライディングするみてぇにして俺の靴先に当たって止まる。


俺は、ゆっくりとした動作で腰を屈めて、“そいつ”を拾い上げた。


じゃらり、と鎖の部分が音を立てる。


そいつは──……。


俺にとっちゃあ何故か不思議に記憶に残る“ある物”だった。


──……ダルの、あの青い雫型の石のついたペンダント、だ。


石の一部が欠けちまってる。


あの時セルジオが床にこいつを落とし、踏みにじったせいだ。


今じゃあ全体に埃だか何だかが被っちまってて、ガキの頃陽に透かして見た、あの透明感のあるキラキラとした感じはすっかり消え失せていた。


そっと親指の腹で石の表面についた汚れを拭い取ってやる。


ランプの明かりくらいしかねぇこの薄暗い中じゃあ見えにくいが、そこには十二年前と同じくある一つの紋章が──今ではこいつが紋章だとハッキリ分かる──透かして見えた。


と──。


ふと俺の様子に気づいたらしいゴルドーがこっちを振り返って言う。


「──何だ、そいつは?

ダルクの持ちモンか?」


ゴルドーにとっちゃあそう大した印象もなかったんだろう、そんなふうに問いかけてくるのに、俺は「ああ……」とだけ答えてみせる。


ゴルドーは特にそれ以上の興味を持たなかったらしい。


「そうか」とだけ返して、それでもう元の作業に戻った。


少しの間その場に立ち止まってた犬カバが、ようやくとてとてと俺の元まで戻って来て、


「クヒ?」


俺を見上げ、問いかけてくる。


だが俺は──……。


そいつにもほとんど気づかず、ある一つの事を考えていた。


サランディール城の、あの開かずの間にあったタペストリー。


キリリとした重厚感のある青生地に、銀色の刺繍で大きく翼を広げた鳥の紋様。


鳥は両足で一つの剣を水平に持ち、鳥の背後には大きな盾が描かれていた。


今この手元にある石もあのタペストリーと同じく『青』で、タペストリーと同じ紋章が刻み込まれている。


あの部屋は、若くして亡くなったってぇ、ミーシャ達の伯父さんに当たる人の部屋、だった。


雰囲気からして、きっとその伯父さん自身の紋章なんだろう。


──まさかこんなものを持っていたとは──


十二年前、セルジオはこの場所でそう口にした。


〜このペンダント、なのかもしれねぇ。


セルジオがこんなにもダルクを痛めつけた理由は。


ダルクはこのペンダントの事は誰にも言うなと言っていた。


真っ青になって、怖ぇ顔で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ