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◆◆◆◆◆


キュウゥ、と犬カバがか弱く鳴く。


ゴルドーの掲げるランプに照らされたそいつ(・・・)は、俺の記憶とはかけ離れた姿でそこに座っていた。


──白骨、だ。


そいつがかろうじてダルクだと分かるのは、当時着ていた服がそのまま残されてるからってぇのと、あとは最後にダルクを見た、そのままの体勢でそこに座っていたから──……。


ただそれだけでしかねぇ。


見る影もねぇ、とは正にこの事だった。


「……ダル……」


「……ダルクさん……」


俺と同様息を飲み、ジュードがショックを受けた声で口を開く。


しん、とした空気がヒリヒリと胸を焼く様に苦しかった。


ゴルドーが嘆息してダルクの前に片膝を折る。


ランプを掲げて、まるで──ダルがまだ生きてるみてぇに、声をかける。


「──……俺はてめーとジュードとの事はよく知らねぇが。

てめぇに縁の深かったガキ二人、連れてきてやったぞ。

……悪かったなぁ、長い事助けに来られなくってよ」


しみじみとした声で、言う。


もちろんダルクからは何の返事もねぇ。


と──。


俺はゴルドーの掲げるランプの元、ダルの服が赤黒く染まっているのに気がついた。


大量の血が染みて固まって、そのまま長い年月を置いちまった。


そんな色だった。


そしてもう一つ。


その血のついた服には無数の“穴”が開いていた。


単純に十二年の年月に風化して開いちまったってぇ穴じゃねぇ。


剣で滅多刺しにされて──……そうして出来た穴、みてぇだった。


俺の目の前に、ふいに“あの日”の光景が蘇ってくる。


血の滴る剣を下げた男が、座って息絶えたダルの前へやって来て、そして──。


ザンッ、とその剣をダルの上に振り下ろす。


何度も、何度も。


まるで、積年の恨みを晴らそうとでもする様に。


「──……ダルが、」


出した声が自分の物とも思えねぇ程に震えていた。


ゴルドーとジュードが、ほとんど同時にこっちを振り返る。


足元からは犬カバが俺を見上げていた。


「──ダルが殺されたのは、本当に反逆罪のせいだとか、飛行船の事でサランディールとこじれたせい、だったのか……?」


ただそれだけの理由で、死んじまってなお あんなに痛めつけられなけりゃならなかったのか……?


ぽつり、呟く様に言った先で──……。


しん、と皆が黙り込む。


ゴルドーもジュードも、きっと同じ疑問を抱いているのに違いなかった。


しばらくの沈黙の後、


「さあな」


と口を開いたのはゴルドーだった。


「──そいつぁ殺ったセルジオ本人にしか分からねぇだろーがよ。

本当の所をしゃべるかどーかは別だが、気になるってんならいずれ直接聞いてみるこったな」


お勧めはしねぇが、と一言付け加えて、ゴルドーは言う。


言う事は、何となく分かる。


どうせセルジオが本心を話した所で、この場にいる誰一人、その話に納得なんか出来やしねぇんだ。


どうせ大した理由じゃねぇ。


聞いたってこっちの胸クソが悪くなるだけだ。


と──何を思ったのか、ゴルドーが俺の頭をわしゃわしゃわしゃっとしてくる。


そーして乱暴にそのまま手を離し、俺とジュードへ向けて言う。


「さぁて、ムダ話は終ぇだ。

さっさとダルクを連れて帰るぞ。

こんなんでもトルスじゃ帰りを待ってる奴がいるんだからな」


言ってフンッと息をつく。


もちろん『帰りを待ってる奴』ってぇのはシエナとヘイデンの事だろう。


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