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あん時アルフォンソは『ダルク、すまない』なんてぇ意味深な言葉を発していたが……。


残念ながら今回ばかりは、特にこれといった反応はなかった。


俺はミーシャと顔を見合わせ、軽く肩をすくめて見せる。


……まぁ、前回うまく行ったからって今回も……なんてな単純な訳にゃあいかねぇか。


俺が んな事を思ってるなんて一ミリも気づいちゃいねぇだろう、ミーシャは再び優しくアルフォンソに語りかける。


「兄上、リッシュとはね、私が亡命した先のトルス国で知り合ったの。

こちらの、ゴルドーさんもそう。

ヘイデンさんやシエナさんや、マリーやグラノス大統領……。

トルスでは、本当にたくさんの方と知り合って、たくさん助けて頂いたのよ。

ジュードやレイジス兄上と再開したのもトルス国で……。

何だか不思議でしょう?

私ね、トルスでは『ダルク・カルト』と名乗って男装して、ギルドの冒険者をしていたのだけれど……」


言いかける、ミーシャに。


「……ク……」


蚊が鳴くよりもっと小せぇとすら思える様な声で──アルフォンソが、言う。


「──えっ?」


ミーシャが、目を瞬いてアルフォンソを見る。


「……ま、ない…………」


「~兄上?

アルフォンソ兄上、今、何と言ったの?

私の言葉がお分かりになりますか?

兄上、」


ミーシャが必死に問いかける。


アルフォンソは、だが……目線を少し下に下げ、一つ瞬いて──。


そうしてまた口を閉ざしちまった。


青い目はまだ『ぼんやり』のままだ。


ミーシャはゴルドーを振り返り「ゴルドーさん、」とゴルドーへ向けて声をかける。


ゴルドーが「ああ、」と頷いた。


「今、何か言いかけたな」


その言葉に、ジュードも頷く。


誰も、アルフォンソが何を言おうとしたのかまでは見当がつかなかったみてぇだが……。


──ダルク、すまない──


俺には、そう言おうとした様に思えた。


……やっぱりアルフォンソはダルの事を知ってやがるんだ。


そして、何に関してなのかは分からねぇが、ダルに対して何か申し訳ねぇと思う出来事があった。


それもたぶん、アルフォンソにとっちゃあ中々に印象深い出来事、だったんだろう。


そうとしか思えねぇ。


──……例えばそいつは……。


十二年前の、ダルクが殺された事に関係してる、なんて事ぁねぇのかな……?


ふと、そんな事を思う。


いや、さすがにそいつは考え過ぎか。


ふぅ、とわずかばかりに嘆息した──ところで。


ふと、アルフォンソの足元付近の掛け布団がもそ、と小さく動く。


もそ、もそもそもそ、と小さな音を立てながら──、布団の中で小さく盛り上がってた“そいつ”がアルフォンソの肩口辺りまで移動してくる。


そうして。


ピョコン、とその黒い毛並みを布団の端から覗かせた。


顔を布団から出し、ぷるぷるっと体を一つ振って、そーして俺達の視線に気づいたんだろう。


小さく黒い目をきょろきょろっとミーシャ、俺、ゴルドー(ちなみにこの瞬間犬カバは一瞬ぶるっと体を震わせた)、ジュード、そして再び俺とミーシャへと向け、


「~クヒ……?」


小首を傾げた。


……まったく、お前って奴は。


「~犬カバ、またそんな所に潜り込んでいたの?

あれほど皆にダメだと言われていたでしょう?」


ミーシャが驚き半分に言って、アルフォンソの元からそいつを──犬カバを持ち上げ抱っこする。


まぁ、当の犬カバは何にも気にしちゃいなさそうだったが。


まぁ、それはそれとして……。


俺はポリ、と頭を掻いて……それとは全然違う話を、ミーシャにする。


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