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この緋の王がどうかは知らねぇが、合わせないで済むなら絶対ぇその方がいいのに決まってる。


俺はもう、あのノワール貴族のおっさんみてぇのとやり合うのは御免だぜ。


それに、だ。


この緋の王相手に、今度もちゃんと犬カバを守りきれるかは、分からねぇからな……。


まぁ、今日の所はベッドん中の犬カバの事は気付かねぇ事にしといてやるか。


一人、密かに嘆息して んな事を思ってると……。


「それじゃあミーシャ、俺達は席を外すから、お前達はもう少しゆっくりしていくといい」


レイジスが言うのに、ミーシャが「はい」と返事する。


"お前達"ってぇのはもちろん俺とミーシャに向けての事だろう。


レイジスはミーシャに一つ頷いて、そーしてガイアスやダンを連れ立って部屋を出る。


途中、


「よろしければノワール王、あなたにも来て頂きたい。

今後の事についてしたいはなしがあるので」


緋の王にも、声をかけた。


緋の王は──じっと俺やミーシャ、そしてアルフォンソの方をも見て──……。


「──分かりました」


全然いいとは思っちゃいねぇ声で、それでも一応は了承して、出ていく。


後に残ったのは俺とミーシャ、それにジュードとゴルドーだけ、だった。


まぁ、初めからここにいるアルフォンソや脇に控えた医者、アルフォンソのふとんに潜り込んでやがる犬カバを除けばってな話だが。


パタン、と戸が閉まって──そして。


何となく、しんとした空気が部屋に流れる。


ミーシャが切ない表情でベッド脇に置かれた椅子に掛け、未だ"ぼんやり"のアルフォンソの横顔を見つめる。


俺は──俺も、ミーシャに倣ってミーシャの隣にある椅子に腰掛けた。


ふっと目の前に影が差したんで見上げると、俺のすぐ左横にジュードが立ち、どこかショックを受けた様な顔でアルフォンソの顔を見ていた。


……まぁ、無事だった時はアルフォンソのこんな様子、見た事もなかったんだろーしな。


ミーシャやレイジスもそうだが、目を覚ましたとは言え──いや、覚ましたからこそ、アルフォンソのこんな姿を見んのは苦しい事、なのかもしんねぇ。


と──ゆっくりとした歩調でゴルドーが後ろからやってきて、声を上げる。


「──どうせならもう少し何か話しかけてやれ。

リッシュ(こいつ)の話じゃ、塔から脱出する間、そうやってたらちったぁ話をしたらしいじゃねぇか。

耳は聞こえてんだろ。

話しかけてる内に何かまた反応があるかもしれねぇ」


言う。


俺にって訳じゃなく、どーやらミーシャへ向けて言ったらしい。


……まぁ、確かに。


ゴルドーの言う事にも一理ある、か。


ミーシャもきっと俺と同じ様に思ったんだろう、ゴルドーを振り返って、切ない表情で頷いて見せる。


そーして胸に手を当てて深く一つ息を吐いて──アルフォンソへ向けて静かに声をかける。


「──アルフォンソ兄上……。

聞こえていますか?

兄上が目を覚まされて、本当に良かったです。

国の事は今、レイジス兄上が兄上の代理として執り行って下さっているわ。

セルジオ・クロクスナーも謹慎している。

だから兄上は安心して、ゆっくり静養なさって下さいね」


優しい声でミーシャが語りかけるが……。


アルフォンソからの反応は、ねぇ。


人形みてぇに──っていうよりは、魂が抜け落ちちまってるみてぇな感じだ。


瞬きの一つもしやしねぇ。


それでもミーシャは語りかける。

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