表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

276/294

5

◆◆◆◆◆


ミーシャに引かれるままアルフォンソの部屋に入ると、そこにはすでにレイジス、ガイアス、ダンの姿があった。


もちろん医者も近くに控えている。


「~兄上、アルフォンソ兄上の意識が戻ったって……」


ノックもせずに部屋に入って、早々にレイジスに声をかけるミーシャに、レイジスは苦笑に似た笑みで応えてみせる。


そーしてそっと半身を動かして俺達とベッドとの間を空けた。


いつも通り、そこにゃあベッドに横たわったままのアルフォンソの姿がある。


だがいつもとは決定的に違うのは──そのアルフォンソの青い目が、開いてるって事だ。


目線はぼんやりと天井を見ているが、確かに目を覚ましている。


その姿を見た途端、パッとミーシャの手が俺から離れる。


「~アルフォンソ兄上!」


アルフォンソのすぐ近くまで行って、ベッド脇の床に両膝をつき、声をかける。


「兄上……分かりますか?

ミーシャです。

兄上、ずっと眠っていたのよ。

あの内乱の日以来、塔の中に閉じ込められていたと聞いています。

お体は、どこか痛む所はありませんか?」


ミーシャにしちゃあ珍しく、矢継ぎ早に声をかける。


だが……アルフォンソからの返事は、なかった。


表情一つ、動かねぇ。


俺があの時、あの塔の最上階で見た時と同じ。


青い目は今も『虚ろ』のままだ。


ミーシャもその事に気付いたんだろう、さっきまでの明るい表情が段々に(かげ)っていく。


或いはちったぁアルフォンソからの反応があるかもと期待したのかもしれねぇ。


レイジスは少しの時を待って──……。


そうしてミーシャを気遣う様に、そっと声をかけた。


「俺も先程、お前と同じ様に声をかけてみたんだが、結果は同じだった。

回復までにはまだ少し時間がかかるかもしれない」


気長に待とう、と穏やかな口調でレイジスが言うのに、ミーシャが少し気落ちした調子ながらも、それでも「はい……」と小さく返事する。


俺は、そんな二人の様子を気にしながらも……。


ちらっと小さく目線だけで、アルフォンソの掛け布団に隠れた足元辺りを隠し見る。


この頃はいつもここに居座ってるって話だったし、まぁ今もそうじゃねぇのかな?と思ってたから、だったんだが……。


予想はたぶん、当たっていた。


アルフォンソの足元近く、きちんと掛けられた掛け布団の一カ所だけが、ほんの僅かばかりに不自然に丸く盛り上がっている。


よーく耳を澄ますと、『すぴー』と言う小さな小さな寝息も聞こえてくる。


こいつは完全に、犬カバだ。


これまで何度も色んな連中にそこにいちゃダメだと怒られてきただろーに、懲りもせずにま~た んなトコに潜り込んでるって訳だ。


~ったく、お前はどんだけアルフォンソの事が気に入ってんだよ?


俺の飼い犬からアルフォンソの飼い犬にでも乗り換える気か?


普段なら有無を言わせずそのままベリッと布団をめくって『お前はまぁた んなトコに潜り込んで』と首根っこ引っ掴んで引っ剥がしてやるとこだが……。


俺は背後からの凍てつく様な気配に、気がついていた。


──緋の王だ。


当たり前の様に、俺らの後についてここまで来たんだろう。


俺は別に信じてるって訳じゃねぇが、ノワール国じゃあ犬カバの血を飲めば不老不死になれるだの、死んだ人間を生き返らせれるだの信じてる奴がいる。


実際俺はそう固く信じて犬カバを手に入れようとした男を身近に見て、知っている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ