4
こうなるともう、扉の口がどこにあったのかもよく分からねぇ。
俺がまだぼんやりしてる間にゴルドーと、それに付随してジュードが廊下を歩き出す。
「──ダルクさんの弔い、俺も行かせてください。
ダルクさんには子どもの時分、とても世話になったので……。
レイジス様にはもちろん、サランディールをしばらく離れる許しを得ています」
「分かった。
よろしく頼むぜ」
「はい」
そんな話を片耳にしながら二人の後をのたくら歩き出す。
普段なら、ゴルドーが他人に『よろしく頼む』なんて言うなんて有り得ねぇ、どーした?と心配(?)するトコだが……。
なんだろーな。
どうにも気が重くって、そこまで頭が回らねぇ。
二人が廊下の角を曲がったんで、俺も曲がる。
曲がった先で──不意に視界が開けて前が明るくなった。
あれ、何か変だな、と思った時には、
ドンッと誰かと正面からぶつかっていた。
「きゃっ、」
と上がった声は、たぶん今俺が一番聞いてぇと思ってた声だった。
──ミーシャだ。
「~っと、悪ぃ」
「ご、ごめんなさい……」
互いに同時に言いかけて、そこでようやくミーシャの方でもぶつかったのがこの俺だったって事に気がついたらしい。
ミーシャが何故かどこか興奮した様子で「~リッシュ!」と俺の名を呼ぶ。
そーして思わずってな様子で俺の袖を引いた。
頬が上気している。
パッと明るい表情は、俺がこれまで見てきたミーシャん中でも一番明るいモンだった。
ミーシャは袖を引く手もそのままに、言う。
「兄上が……。
アルフォンソ兄上が、目を覚まされたの!
お願い、一緒に来て!」
「え……?
あ、え……?」
あんまり突然の事に、頭が全く追いつかねぇ。
ふと気づくと、ミーシャを振り返る様な形で、俺の前方からゴルドーとジュードがこっちを見ている。
そして、その更に少し向こうに──。
赤錆色の短髪に、色素の薄い金色の眼をした男が一人立っているのが、見えた。
──緋の王……。
さっきミーシャと中庭にいたもんな、そりゃ一緒について来てて当然だが……。
その、金の眼が俺の視線とかち合う。
淡々としてるが、どこか──。
そう、見るだけで人を残虐に射殺せる様な、そんな目線だ。
たぶん、ミーシャは気づいちゃいねぇだろう。
一瞬ぎくりと背筋を強張らせた俺に構わず、そのまま俺の手を引く。
俺はその手に引かれるまま、ミーシャにつられて廊下を走り出した。
ゴルドーとジュードが後を追ってくんのが分かる。
その後からゆっくりと──緋の王がついてくるのも……。




