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言いかける──が……。
ゴルドーが──俺が初めて目にする様な静かな面持ちで俺を見てくるんで、俺もわあぎゃあ言う言葉を無くしちまった。
代わり、怪訝な顔もそのままに、
「~……何だよ?」
問う。
ほんとはゴルドーなんかに構ってるヒマはねぇんだが……。
俺の んな思いをもちろん知るはずもねぇゴルドーは、一呼吸置いて俺の首根っこから手を離し、更に一呼吸置いて口を開く。
「──王子サマから、今も地下通路に眠ってるあいつの遺体を出してもいい許可が降りた。
これから行くがリッシュ、お前も来るか?」
そいつは、突然の問いだった。
今も地下通路に眠ってるあいつ──ゴルドーのヤローは名前こそ言わなかったが、そう言われて思いつく存在は一人しかいねぇ。
──ダル……。
ダルク・カルトだ。
もちろん俺だってその存在を忘れてた訳じゃねぇが、何となく、知らず知らずの内にあんまり考えねぇ様にしちまってた。
今はそんな場合じゃねぇから、とずっと自分に言い聞かせて。
けど……。
言われてみりゃあ確かに、レイジス達はあれやこれやと忙しそうだが、俺やゴルドーに今出来る事はそう多くはねぇ。
実際俺なんかはこーしてその辺フラフラしてたくれぇだし。
そこにレイジスの許しが出たってんなら……。
今なら確かに、地下通路に眠るダルクを引き取りに行ける。
ダルを殺した本人──セルジオは今は謹慎させられて自分の部屋から出られねぇ様になってるしな。
レイジスが許してくれたってんなら、サランディール国から過去に問われた反逆罪とやらも問題にしねぇでくれるって事だろう。
俺が、返事もせずにぼんやりしちまったから、だろう。
ゴルドーが「──いや、いい」と話を打ち切ろうとする。
「聞いただけだ、忘れろ。
お前、何か急いでたんだろ。
とっとと行け」
シッシッと、いつもみてぇに俺を追い払う様にしてゴルドーは言う。
確かに、ミーシャと緋の王の事は気にはなったが……。
俺は……。
「──いや……。
行くよ」
そう、返事した。
昔、その墓には誰も入っちゃいねぇじゃねぇかとゴルドーとヘイデンに食ってかかった。
十年以上も経って、今やっとあいつを引き取って、その墓に納めてやれる時が来たんだから……。
ゴルドー一人に任せるんじゃなく、俺も一緒に行ってやるべきだろう。
ゴルドーは──ほんのわずかにホッとした様な、何とも複雑な表情を見せ、それでも、
「──分かった」
そう、返してくる。
俺は──何とも言えねぇ複雑な気分でその声を聞いたのだった──。




