1
レイジスが皆を集めてジェノと対談したあの日から数日が経った。
その間レイジスやミーシャ、ダンやガイアスはもちろん、今ではジェノやジュード、そしてゴルドーまでもが皆それぞれに忙しそうに立ち働いているらしい。
らしいっつったのは他でもねぇ。
俺はここ数日そこからちょっと遠ざかって、何をするでもなく過ごしている。
一応は信頼してもらえたんだろう、あれから見張りの騎士もついてこなくなったし、まぁまぁ自由にさせてもらっちゃいるんだけどな。
俺がその間行った所って言やぁ、ちょっとした城内の散歩とアルフォンソの見舞いくらいのもんだ。
さてそのアルフォンソの容体については、残念ながら今の所、そう大きな変化もねぇ。
ただし顔色はかなり良くなってきてるし、立てる寝息もかなり安らかだ。
もしかしたら数日の内には意識を取り戻すかもしんねぇ、ってのが医者の見立てだった。
まぁ、そこはいいんだが。
セルジオがアルフォンソに盛った白い粉の正体は今も謎のままだ。
そいつがどこから仕入れられたモンなのか、そこにノワール国が絡んでんのかどうか。
更にはあの一年前の内乱の真実も──今の所はあれ以上の事は何にも分かっちゃいねぇ。
まぁ、レイジス達もキッチリ調べてるし、その内には何か分かるだろう。
けどよ……。
どーも、なんかモヤモヤすんだよな……。
そのモヤモヤの正体が何なのか、ここ数日何となく考えてんだけど分からねぇ。
はぁ、と息を吐きながら、俺は城の廊下の窓辺から中庭の方を見下ろす。
青々とした緑と花と、石畳みの小道。
脇には洒落た装飾のついた白いベンチがある。
見たトコ誰もいねぇし静かそうで雰囲気もいい。
それこそミーシャを誘ったら楽しく過ごせそうないい場所だ。
──と、そんな事を思った正にその時の事だった。
その中庭に、ある二人の人物がゆったりとした歩調でやって来た。
ショートヘアの黒髪に華奢な背格好は、上から見ててもハッキリ分かる。
ミーシャだ。
そして隣に並んでいるのは、赤錆色の髪の男、だった。
俺は思わず眉毛を寄せて、窓に張り付く様にして下を見る。
あいつ──あれ、緋の王じゃねぇか……?
何であいつがミーシャと並んで歩いてんだよ??
思いながら──
──ノワール王は、ミーシャ様の婚約者だったからな……。
前にジュードが言ってた言葉が、急に現実味を帯びて頭の中に蘇ってくる。
あの時はミーシャは世間的には死んだ事になってたし、婚約なんてモンはもうなかったも同然……くらいに思ってたが、よくよく考えてみりゃあ、今のこの状況って、どうだ?
ミーシャはこうして生きてるし、ノワール王もサランディール側も、別に婚約破棄したなんて言っちゃいねぇ。
〜この頃色んな事が起こりすぎて、すっかりその辺の事が頭から抜け落ちちまってた!
ノワール王──緋の王が、白いベンチの上にハンカチを敷いて、ミーシャにそこに掛ける様促す。
〜こうしちゃいられねぇ!
ノワール王が何を話すにしろ、どーせロクな事はねぇ。
すぐにも行って、邪魔してやらねぇと!
と、焦って窓から離れ、下へ行こうとした──所で。
「おい、コラ、リッシュ」
なんてぇ声と同時、首根っこを後ろからグンと掴まれる。
振り返ってみるまでもねぇ。
──ゴルドーだ。
だが俺は思わず後ろを振り返って、
「何だよ、ゴルドー。
俺は今忙しいんだってぇ……」




