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レイジスの兄貴がどんな反応するかももちろんだが、ガイアスのおっさんやダンに、この俺がレイジスをたぶらかしてた(って事になるんだろーな……)なんて知られんのも微妙過ぎるしよ……。


内心ヒヤヒヤしながら捲し立てる様にそこまで言い切り、俺は窺う様にレイジスの顔を見る。


俺の苦しい口上に──。


レイジスは軽く口を開き少しの間を置いてから、


「──そう、か……?」


とやや疑問符の残る返しをする。


わっ、ヤベ……。


やっぱ何かちょっとおかしいってなってやがる……!


レイジスはなおも何か逡巡する様に顎元に手をやる。


俺は──これ以上余計な言葉を重ねるのが怖くて、たらたらと冷や汗を流しながら目線をレイジスから逸らした。


と──意図してかどうかは分からねぇが、このピンチを脱させてくれたのが、常識人のダンだ。


ごほん、と一つ咳払いをし、レイジスに「殿下、」と呼びかける。


「それはさておき。

今は目の前の問題を解決致しましょう」


そう前置いて、ダンはスパッと一瞬で話題を切り替える。


「ジェノ・クロクスナーの話は確かに筋は通っています。

セルジオの目を盗み入手したというその白い粉も、彼がセルジオ側の人間であればわざわざ我々に出す必要のない物でしょう。

父親が謹慎処分を受けた後、自身も自主的に謹慎をしているとも聞いています」


そうだったのか……?


ちら、とジェノの方を見やるが、ジェノはただ黙したまま目を下へしている。


中々に従順な様子だ。


なんか……ジェノの野郎がこんなに真面目にしてっと調子狂っちまうんだが。


けど、まぁ……。


アルフォンソの話をする時もそうだけどよ、一応ジェノはそーゆー主従関係みてぇのはきっちりさせてくんだよな。


かなり意外だが。


「あまり良い噂の聞かぬ男ではありましたが、どの様に致しましょうか?」


ダンがレイジスに判断を仰ぐ。


レイジスは未だ顎元に手をやったまま、何か──ってぇより恐らくリアの事を──考え込んでたみてぇだったが。


ダンが「殿下?」と再度声を掛けると、ようやく王子としての本分を思い出したらしい、


「──あ、ああ……。

そうだな……」


そう言い置いて、一つ静かに息を吐き、答える。


「まぁ……。

今こうしてここへお前を呼び出している時点で、向こうもある程度何が起きているか察してはいるだろう。

これよりの自己謹慎は必要ない。

これからは謹慎ではなく、むしろサランディールの助けになるべく動いてもらいたい」


言うのに、ジェノがほんのわずか感極まった様な様子できちんとした騎士みてぇに「はっ、」と頭を下げる。


レイジスはそれに一つ頷いて、そうして机の上に置かれた『謎の白い粉』の入った小さな三角の紙包みへ目を落とす。


「だが──、」と発せられた言葉には、重みがあった。


「この粉が毒にしろ、他の何かにしろ、兄上の件に関して(セルジオ)をこれだけで問い詰めるのは、骨が折れるぞ」


独り言の様に出された言葉に、応えられる者は誰もいなかった──。

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