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やっぱ肝はアルフォンソとセルジオか。
けどなぁ……。
アルフォンソはいつ意識を取り戻すかも、取り戻してもちゃんと当時の事を語れる状態になるかも分からねぇし。
セルジオの言う事は信用ならねぇ。
結局八方塞がりだ。
そう思い、密かに息を吐きかけた──ところで。
俺の脳裏に一つ、不意に浮かんだ顔があった。
いや……本となら浮かんだ瞬間そいつを振り払いたい気分でいっぱいなんだが……。
「……そういやあいつ……」
我知らず出しちまってた声に、ジュードとレイジスが揃ってこっちに顔を向ける。
俺はそいつに誤魔化す様に「はは……」と笑って頭を振った。
「あ~、いや、何でもねぇ。
ちょっと思い出した事があっただけだからよ」
言ってみたがそいつで二人を誤魔化しきれたかどうか……。
だが、全く何の確証もねぇ事だ。
まずは自分である程度探っておきたかった。
しかもそいつは恐らく『リッシュ』にじゃあなく『リア』にしか出来ねぇ。
ジュードはともかくレイジスに今そのままを話すのはあんまし……ってぇより全く気乗りしなかった。
俺はなるべく何でもねぇ風を装って、二人に誤魔化し笑いしつつ席を立つ。
「あ~、それじゃ、今んトコ話はここまでだな。
俺、ちょっと用事を思い出したからもう行くぜ。
二人共、ちゃんと話せて良かったよ。
これでお互いこれまでのわだかまりも解けたってコトで。
じゃ、」
言って、そそくさと部屋を出る。
もちろんそこにゃあ例によって例のごとく見張りがいて、俺の後を再びついてくる。
さっき部屋に戻ったばっかだってぇのに今度はまたどこに行く気だ?と訝しがられててもおかしかねぇが、とりあえず向こうから聞かれやしねぇから気にしねぇ事にしておく。
さて、と。
それじゃあ早速行動開始と行きますかね。
◆◆◆◆◆
コン、コン、と俺はその男の部屋の戸を、叩く。
服装は、この城ん中じゃあすっかり定着しちまったメイド服。
ガイアスに頼んで用意してもらった化粧道具でしっかり『リア』を作り込んできた。
ちなみに俺の三、四歩後ろには例によって例のごとく俺専属の(つってももう間違いじゃねぇだろう)見張りの騎士がついている。
ガイアスに用意してもらった部屋でバッチリ『リア』に変身した俺に、こいつは相当ショックを受けた様な顔をしてたが、特に何か言ってくる事はなかった。
サランディールの英雄ガイアス・クラインから「レイジス殿下にはもちろん他の誰にもこの事は話してはならぬ」と念押しもしてもらったんで、たぶん周りに言いふらす様な事もなさそうだ。
「殿下はリアにゾッコンらしいからな。余計な衝撃を与えてはならんぞ」と、そう言ったガイアスの言葉に、見張りの騎士は神妙に頷いて納得していた。
何となく、こーゆー生真面目な感じはジュードとも通じる所がある様な気もする。
まぁ、それはそれとして。
ノックした後、向こうからの返事を数秒程も待っている──……と。
「~んだぁ?
俺は今忙しい……」
声と同時にガチャ、と部屋の戸が開く。
気だるさとイラついてる感じの声と顔が、開いた戸の向こうから出てくる。
そして、その動きが。
俺の──というよりリアの──姿を見て、一瞬はたと止まる。
予想はしてなかったが来たかっていう様な、そんな笑みを浮かべた。
「よ~ぉ、リアちゃんじゃねぇの」
口を開いた瞬間、もわんときつい酒の臭いが漂う。
そう──その男は、俺が(というより『リア』が)最も二人きりじゃあ会いたくねぇ人物、ジェノ・クロクスナーだった。
開けた戸に手をかけ、俺を値踏みするみてぇに上から見下ろしてくる。
「何だ?俺が恋しくなって部屋まで押しかけか?
こっちは全然構わねぇけど」
言いながら、俺の後方の見張りの騎士の存在に気づき鬱陶しそうな目をそいつに向ける。
見張りの騎士は平然としていたが。
俺が返事をする間もねぇ、ジェノはヒックと小さくしゃっくりをして、俺が部屋に入れる様道を開ける。
「どうぞ?
せっかく来たんだ、ゆっくりしていけよ。
ただし──」
言いながら俺の背に手を回し、部屋に連れ込んで──そうしてもう一方の手で部屋の戸を閉めちまう。




