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その声とピッタリ同時、犬カバが


『ブッブゥーッ!!』


と大きな音を立ててお得意の屁をぶちかました。


一瞬の間を置いて、そして。


「ぐ、わぁ……何だこの匂いは」


「うっ、くぅ……」


この場に居合わせた騎士達から声が漏れる。


レイジスが目をぱちぱちさせて俺と俺の足元の犬カバを見ている。


ミーシャの様子はこっからじゃ何とも見えなかったが、緋の王は──鼻元に片袖を当て、やっぱり俺と犬カバの方へ視線を向けてくる。


ただしレイジスや他のどの人間とも違ってこいつはハッキリとした殺気の目、だ。


犬カバもそいつに気づいたんだろう、「キュッ」と小さく鳴いて屁を被らねぇ様若干引いてた俺の足の陰に隠れに来る。


緋の王の視線をただ一人受ける事になった俺は──……何の悪気もねぇんだと(うそぶ)いて小さく肩を(すく)ませて見せたのだった──。



◆◆◆◆◆


「──それで、一体どういう事なのかな?」


と──珍しくもピリリとした声と厳しい口調で、レイジスは俺と、俺の左側の席に台を置いてレイジスの視線を真っ向から受ける高さにいる犬カバ、そして俺の右側の席に座ったジュードに向かって声をかける。


場所はもちろんサランディール城。


レイジス自身の執務室らしい部屋だ。


俺ら三人とテーブルを挟んで向こう側にはレイジスと、その右側に怒った……っつぅか厳しい表情のミーシャが掛けている。


そしてミーシャの隣の席にちゃっかり座って俺ら三人をギロリと睨んでくるゴルドー。


その後ろ手にはガイアスとダンが立ち、やっぱりしかめつらしい顔で俺達三人(まぁ、正確には二人と一匹、だが)を見ている。


完全に人の陰に隠れられねぇからだろう、さっきから犬カバの《《ソワソワ》》が止まらねぇ。


ジュードは完全にうな垂れちまって、話す気力もなさそうだ。


俺は──今こそリアに変装してレイジスの気を逸らしてぇ……と思いつつ、目の前全員の痛ぇ視線から回避すべくテーブルの木目をただただ見ていた。


あれからあの王の間は、犬カバの放った屁によってわりと小規模に混乱した。


セルジオは厳重な見張り付きで奴自身の執務室にとりあえず軟禁状態に。


緋の王にゃあ一旦今日まで泊まっていたってぇ客間へ引っ込んでもらっている。


レイジスとミーシャが帰って来た事、そこで起こった物事に城の中は騒がしくはなったが、レイジス達本人とガイアスやダン、その部下達によって今はそれなり落ち着きを取り戻している。


そんなこんなでもうすっかり夜も開け切って、すでに午前中も半ばまで差し掛かっている。


俺ら三人はセルジオと同様その間この部屋にほぼ軟禁状態にされてたんだが……。


ようやくこの場の皆の手が空いて、こーして問い詰められる事になったのだった。


俺はアルフォンソを救出してたからよ、昨日の夜から一睡もしてねぇんだぜ?


もうちょっと優しい感じで問い詰めてくんねぇかな……?


そんな事を思いつつ、俺は──他の誰もレイジスの問いに答えちゃくれなさそうだったから、仕方なく


「あ~、その~……」


と声を上げる。


目の前の皆の視線がすこぶる痛ぇ。


だが、たぶん何らか話をしねぇ限り、この状態を脱する事は出来なさそうだ。


何をどう説明すりゃあいいのか考えを巡らせつついるとレイジスが再び口を開く。


「──アルフォンソ兄上が父王と母を弑した。

そう君達は思っていた、もしくは《《知って》》いたのだな?」


ピリリとした口調もそのままに、言う。


そいつに──……。


俺と、隣の犬カバはギクリと肩を(すく)ませる。


対面にいるミーシャの目が、めちゃくちゃに怖ぇ……。


絶対ぇ今、レイジスの兄貴の言葉がそのまま当たりだって見抜かれた……。


ジュードは何の反応も見せなかったみてぇだが……。


レイジスがハァともフンともつかねぇ息を吐いて『やっぱりな』ってぇ反応をする。


「先程ノワール王、そしてセルジオ・クロクスナーからそういう話を聞いた。

真偽の程は明らかではないが……。

そう思うと、これまでのジュードの行動、リッシュくんが《《やけに進んで》》サランディールの内情を見に行こうとしてくれていた事にも説明がつく。

無論リッシュくんが純粋に私達の力になってくれようとしていた気持ちに偽りはないだろうが……」


〜そう、そう!


そうなんだって!


確かにアルフォンソの事についちゃ皆に黙ってた事もあったが、純粋にレイジス達の力になろうと思ってた気持ちに嘘はなかったんだぜ!?


そう普段ならしっかり弁明しとく所だが、俺はたらたらと冷や汗かきながら、ただただテーブルの木目を見つめ続ける事しか出来なかった。


レイジスは続ける。


「──……知っている事を洗いざらい話してくれ。

俺もミーシャも、《《真実》》を知りたい。

何故君達がそう信じるに至ったのか、そこまでの経緯の全てを」


言われ……俺はチラッとジュードの方を見る。


ジュードは、変わらず微動だにしねぇ。


絶対ぇに、何があっても自分が当時目にした事をレイジス達に言うつもりはねぇってぇ強い意志が感じられる。


俺だって、(まぁレイジスはともかくとしても)ミーシャが傷つく様なこんな話、したかねぇよ。


けど……このままじゃ話が一向に平行線のままだって事だけは確かだ。


だから俺は──ジュードが当時見たってぇ出来事じゃあなく、《《俺が》》直に直面した出来事だけを言う事にした。


「〜……け、経緯って程、大した事じゃねぇんだ」


そう、口にした瞬間。


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