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護衛二人がゴルドーの野郎に助太刀して──そーしてジュードは、あっさりとその場で捕えられた。


な、何だ?


何がどーなってやがるんだ??


思わず涼やかな表情のレイジス、そしてミーシャの方にまで視線を送るが、レイジスはともかくミーシャは口元に両手を当て驚いた様にジュード達の方を見ている。


この事態がどーゆー成り行きで起こってんのかは分かっちゃいねぇみてぇだ。


ちゃんと理解してんのはレイジスと、当事者のゴルドーとジュードだけ、だろう。


「あ~、ったく」なんてぶつくさ声を発しながら、ゴルドーが立ち上がってパンパンと手を払う。


そーしてさも当然にレイジスへ向かって声をかけた。


「王子サマよ、この借りは高くつくぜ」


言われたレイジスの方は「ああ」とやっぱり余裕の表情だ。


流石の流石に、これ以上抵抗してても無駄だと分かってるんだろう、ジュードは項垂れ歯を噛み締めている。


そいつはいいが。


この今の状況──まさか……。


「ジュード、お前……。

セルジオを、葬り去ろうとした……のか……?」


そうとしか考えられねぇだろ。


ジュードは、項垂れたまま何も言わねぇ。


けど……ジュードがそいつをする《《理由》》に、心当たりがねぇ訳じゃねぇ。


レイジスやミーシャが来る前にセルジオを葬り去らなきゃならねぇ理由……。


そいつはもう、アルフォンソの事以外に考えられねぇじゃねぇか。


セルジオがどういう理由でアルフォンソを幽閉してたかは定かじゃねぇ。


が、もし万が一奴が、一年前の内乱の時に王と王妃を殺したのが《《誰なのか》》を知っていたら。


そしてその事をレイジス達にぶちまけたら。


今は倒れちまってるからいいが、アルフォンソの体調が戻った時、今度は幽閉じゃなく父母殺しで牢屋に入れられる……なんて事にもなりかねぇ。


そいつはジュードからしたら耐えられねぇ事だろう。


だから、レイジス達が来る前にセルジオの口を塞ごうと考えた。


ジュードならこっそり早馬を飛ばすなりなんなり、先に城に入る事も出来ただろうしな。


それにしても。


んな重要な事、黙って一人で行っちまうなんて、水臭ぇじゃねぇか……ジュード。


俺の問いかけに答えたのは、ジュードじゃなくレイジスだった。


「ジュードが何か動くのならこのタイミングかと思ってね。

ゴルドー殿につけてもらっていた。

結果としては正解だった様だな。

さて……」


言って──レイジスはサッとジュード達から未だ少し動揺した様子のセルジオの方へ向き直る。


「セルジオ·クロクスナー。

お前があの内乱を引き起こし、アルフォンソ兄上を幽閉し、サランディール国を好き勝手に操っていた事、既に全て聞き知っている。

然るべき処罰を受けてもらう」


レイジスのその言葉に。


セルジオは、一瞬前までの動揺を すっ、と腹の底に引っ込めた──様に見えた。


ダークグレーの眼が冷たく──だが、強く澱んだ光を放つ。


その唇が皮肉げに歪み、ハッと鼻で笑う様に息を吐いた。


そうして──《《あの十二年前》》と同じ、凍りつく様な冷たい声でレイジスに向かった。


「── 一体何を仰られるかと思えば。

この私が内乱を引き起こした?

アルフォンソ殿下を幽閉?

一体何のお話です」


その、声を聞いた瞬間。


俺は頭の先からザァーッと血の気が引いていくのを感じた。


《《あの時の、あの声と同じだ》》。


けぶる様な燭台の灯りが、ダルクの青い石のペンダントに当たって光を反射させる。


凍りつく様な冷たい声。


手の平から落としたダルクのペンダントをガッと踏みつけ、ふみにじる、その音──……。


その、男の顔──……。


目の前がチカチカする。


心臓がバクバクと異様な音を立てる。


やっぱり、そうだった。


十二年前、地下通路で倒れたダルクの後を追って血の滴る剣を持ちやってきたのは、セルジオ・クロクスナーだ。


「キュ?」


犬カバが、俺の足元から心配そうに小さく声を上げる。


大丈夫だと目顔で示してやりたかったが、こっちは気を失わねぇ様にするのでやっとだ。


セルジオの言葉に、レイジスは一切耳を傾ける事はなかった。


ただセルジオを冷たく一瞥して、


「──連れて行け」


そう一言口にする。


ただその一言だけで、レイジスの部下の二人くらいが前に出てセルジオを両脇から捕えちまう。


そうして城の牢獄の方へしょっ引いて行こうとした。


俺は気を失わねぇ様眉をグッと寄せ目を細めてその光景を見てたんだが──……。


──……嘲笑(わら)ってる……?


セルジオの口の端が、皮肉げに歪んで上がっているのが見えた。


まるで、んな事には意味がねぇとでもいう様に。


何だ……?


目を細めたまま、セルジオを見ている──……と。


「──これはこれは。

一体何の騒ぎかと思えば。

レイジス殿下ではありませんか」


俺達の後方──……入ってきた扉口の方から、そんな声がかかる。


表面的には明るく親しみを込めた声だが、その裏にある研ぎ澄まされたナイフの様な鋭さを、全く隠しきれちゃいねぇ。


元来隠すつもりもねぇ、そんな声だ。


俺のこのギリギリの意識の中でも分かる。


こいつは、たぶんヤベェ奴だ。


レイジスがスッと声のした後方を振り返る。


ミーシャが一瞬ぎくりとして、同じく声のした方を見る。


コッ、と靴の音が後方から聞こえる。


と、そいつの為に道を開く様に、レイジスの騎士達の列が自然に割れる。


レイジスが、何故かミーシャの姿をそいつから隠す様にミーシャの前に出る。


「キュ?キュキュ?」


犬カバが、俺の足元で顔をキョロキョロさせながら戸惑いの声を上げている。



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