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まぁ、とにもかくにも、だ。


そーして表面上は何の変化もなく過ぎた日が一変したのは、俺がアルフォンソを連れ帰ってから数えて四日後の夜遅く。


レイジスがクライン邸に到着してからの事だった。


元々レイジスの家臣軍団や護衛のトルス兵もこっちに向かってるって話だったからよ、俺はてっきり相当な大所帯でパーンとド派手にやって来るんだと思ってたが、実際はその真逆だった。


レイジスと、その護衛が三人っていう、逆にこっちが道中の心配をしちまう様な少人数での、それもかなり静かなお忍びでの登場だ。


しかもどーゆールートをどーゆー風にやって来たのか、着いた時は馬車さえ使わず徒歩でさ。


……まぁ、皆特にこれっていう目立つ格好もしてねぇし、レイジスはちゃんと灰色のフードを目深に被ってたし、道中誰かに怪しまれたりなんて事たぶんなかっただろーけど。


けど……。


「レイジス兄上……!」


「殿下……!

よくぞご無事で……!」


ミーシャやガイアス、それにその他の面々もレイジスの登場に歓喜する中、俺は──……。


思わず一人嫌~な顔でレイジス……じゃあなく、その三人の護衛の内の一人、俺から見て一番右端に立つ男の方を見た。


……いや、目についちまった。


服装はもちろん他の面々と同じ、目立つ所のねぇ旅人スタイル、なんだが、それが更に違和感っつーか。


普段からの態度の悪さ、ガラの悪さが表に滲み出ちまっててよ、他の面々から浮いちまってる。


その顔を見た瞬間、


「~げっ、」


と思わず声を上げると、向こうももちろん俺に気づいたんだろう、すかさず


「てめぇ、会った早々『げっ』たぁなんだ、『げっ』たぁ!

この俺様自ら足を運んでやったってぇのに失礼だろーが!」


いつもどーりの大声で、その男が──ゴルドーが、返してくる。


その大声に思わず俺も


「失礼なのはそっちだろ!

んな時間に人様ん家で んなでけー声あげんなよ!」


言っちまう。


と、クライン家の面々も他の護衛二人も、レイジスやミーシャまでもが目をぱちくりさせて俺とゴルドーの方を見た。


一瞬し~んとした静寂が訪れたが……。


ミーシャが くすっと柔らかく笑い、レイジスも和やかなもんでも見た様な目で俺とゴルドーの方へ優しい視線を送ると、ガイアスが気を利かせて


「さあ、こんな所にいつまでも殿下を立たせておく訳にはいきますまい。

どうぞ中へ」


と屋敷の中へレイジス一行を案内してくれた。


いつもだったらここに犬カバもいて生意気にクヒクヒ笑いこけてる所だが、姿が見えねぇ所を見るとどーやらまたアルフォンソの所にでも入り浸ってんだろう。


あいつ、さりげに知りたがりだからよ、レイジスがやってきたなんて大きなイベント事(?)にゃあ真っ先にやって来そうなもんだが……。


まぁ、別にいいか。


んな事より、だ。


レイジスとその護衛二人が屋敷の中に入って行くのに少し歩を遅らせて……俺はゴルドーの野郎の横について、今度は声量を落として「つーか、」と声をかける。


「なんであんたがここに?

仕事はどーしたんだよ?」


ごくごく当然に、当たり前の事を聞くと、ゴルドーの奴もちっとは周りへの気配りってやつを思い出したらしい。


さりげに声を抑え気味にして、言ってくる。


「ゴルドー商会のこたぁ、ユークに任せてきた。

……言っただろーが。

落とし前は必ずつける。

それにそこの王子サマとも約束したしな。

協力して報酬もキッチリ貰っとかねぇと」


「……って~かそれが本との目的だろ」


思わず半顔になりながら言うと、ゴルドーがいつにも増して極悪の笑みを見せてくる。


……まあ、とはいえ。


俺だってゴルドーの一番の目的が本当にレイジスからの報酬じゃねぇコトくらい、ちゃんと分かってる。


──ダルクの仇を取る。


その約束を果たす為に、忙しい仕事も全部放っぽって、んな所にまで来たんだろう。


俺だって……。


ダルクやアルフォンソをあんな目に遭わせたセルジオをこのままのさばらせてていいとは思ってねぇ。


ゴルドーじゃねぇが、落とし前はキッチリつけさせてもらうぜ。



◆◆◆◆◆



「──兄上……」


アルフォンソとレイジスの対面は側で見てても苦しい程だった。


俺はレイジスとアルフォンソの仲がどんなモンなのか聞いた事もなかったし、考えた事もなかったが……。


このレイジスの反応を見る限り、兄弟仲はたぶんフツーに良かったんだろう。


──レイジスの んなにショック受けた顔見んの、初めてだ。


リアに『無精髭の男は嫌い』って言われた時だって、んな顔はしてなかったぜ。


いや、まぁフツーにショックの種類が違うってだけの話かもしんねぇけど。


レイジスの護衛二人もやっぱりショックは隠しきれねぇみてぇだった。


「──ここへ来てからはずっと、こうして眠ったままなの。

顔色は随分良くなってきたし、お医者様も命に別状はないから大丈夫と仰って下さったのだけど」


ミーシャが静かにそう言うとレイジスも同じく静かな声で「そうか……」と返す。


……このシリアスな雰囲気の中あれなんだけどよ。


俺は目だけでこの頃いつもここに入り浸ってる犬カバの姿を探す。

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