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「──アルフォンソの事だけどよ。
さっきは一つ、言ってなかった事があるんだ」
どこに聞かれるとも思っちゃいなかったが、念の為小声で言う──と。
ジュードが強い目もそのままに、俺の方を見る。
俺はそいつに一つ肩をすくめて続きを口にする。
「内乱の日の事……。
アルフォンソが王と王妃を手にかけた事、なんだけどさ。
アルフォンソはお前があの日見た通り、自分が二人を殺しちまったって言ったんだけどよ……。
どーも、様子が少しおかしかったんだよ。
いや、まぁあんな状態だし、そのせいで頭が錯乱してたってだけの話かもしんねぇんだけどよ……」
『様子がおかしい』『頭が錯乱』の辺りから、ジュードの俺を見る目付きがどんどん厳しくなってくる。
べ、別に俺ぁアルフォンソの頭がおかしいなんて話をしてる訳じゃねぇんだぜ?
俺がジュードの目線にガラにもなく多少気後れしてんのに気づいてんのか気づいてねぇのか。
ジュードは「言え」と一言で先を促す圧をかけてくる。
俺はもう一度軽く肩をすくめて、俺の感じた事を言う。
「……何か、動揺してた様に見えたんだ。
自分がした事に、その時初めて気がついた、みてぇな……。
……やっぱ、記憶が混乱しちまってんのかな?
あの様子じゃあ、ちゃんと話すのはしばらくは難しそうだぜ」
言うと……ジュードが暗い目で「ああ……」と一言返してくる。
“あの日“の事、今この世で一番アルフォンソに語ってもらいてぇのは、ジュードだろう。
内乱の首謀者がセルジオだったって、それだけ聞けたんでもまぁ大分救われる気もするが、もしそれが本当に真実ならアルフォンソは一体何の為に、どーいう成り行きで父親と母親を手にかける事になったのか。
セルジオが内乱を起こした件とアルフォンソの件は、実は全く繋がりがなかったのか……?
考えてみても、よく分からねぇ。
それにアルフォンソのあの様子じゃあ……。
もしかしたら永遠に、真相は闇の中になっちまうかもしれねぇな……。
そんな事を思いながら……俺とジュードは二人、そのまま黙り込んじまったのだった──。




