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「……俺は、そう、そのダルク・カルトにガキの頃世話になったんだ。

カルトの名は、勝手にもらった。

ダルクはもう十年以上前に死んじまったんだけど、トルスで仲間と飛行船なんてモン作っててさ、結構楽しくやってたよ。

俺からしたらサランディールの城で鍛治職人として働いてたってのが驚きだけど、あんたからしたらトルスで飛行船作ってたって方が驚きなんじゃねぇのかな?」


仲間と飛行船作ってた、の『仲間』はもちろんヘイデンとゴルドーの事だ。


まぁ仲間って表現が正しいのかは微妙なトコだし二人が絶妙に渋い顔しそうなのは目に見えてるが、何も知らねぇアルフォンソに向けての分かりやすさ重視だ。


返答も期待せず軽く問いかける様に話しかけた先で、アルフォンソはやっぱり何も反応しねぇ。


アルフォンソが何か反応するのに何がきっかけになるのか分からねぇから、俺は構わず先を続けた。


「それから──……。

一年前の内乱の時には、ミーシャはジュードに教えてもらった地下通路を使ってトルスへ亡命する事になったんだけど。

その途中で、偶然ダルクの名を拾う事になったらしいんだ。

ダルクの奴、地下通路で死んじまってたんだけどさ。

そこにミーシャがつまづいて、その拍子に飛行船の鍵が付いたダルクの名前の刻まれたタグが落ちてきたんだって。

ミーシャはそのダルクの名を使って、トルスじゃ男装してギルドの冒険者として生活してたんだぜ。

俺はそん時にミーシャと出会って……。

それから、色々騒ぎがあって、ダルクの名がちょっと街で有名になっちまってさ。

『ダルク・カルト』の事を知ってたジュードやレイジスがその名前に引かれる様にミーシャの元を訪れて……。

それで二人とも知り合った。

……何だかヘンな話、だよな。

ダルの奴、もうとっくの昔に死んじまってるクセに、その名前だけで人と人とを結び付けてっちまった」


階段を降りる足を止めず、そんな話をする。


もちろんアルフォンソからの返事はねぇし、あれから結構下に降りてきたはずだが未だに塔の四分の三程度の位置にあるはずの小窓にも行き当たってねぇ。


ただ、ここまで降りてきて小窓に行き当たってねぇってのはどう考えてもおかしいし、もしかしたら俺が初めに上ってきた正規の階段とこの裏道の階段はどこかで段なり何なりが微妙にズレるかなんかして小窓の部分がこっちにかからねぇ様になってんのかもしれねぇ。


俺の感覚じゃ、もうそろそろ一番下に着いてもいい頃だ。


俺は──……もちろん答えが返ってくる事ぁねぇだろうなと思いつつも、これまでアルフォンソに会ったら一番に聞こうと思ってた事をようやっと口にする。


「──……ジュードがさ。

あの内乱の日、あんたが国王夫妻を──あんたやミーシャ、レイジスの、親父さんとおふくろさんを殺す所を見ちまったってんだ。

内乱の首謀者はあんただったんじゃねぇのかと、考えたくねぇが、考えてる。

あんたに会って、ちゃんと真実を確かめてぇとも。

……。

あんたも分かるだろ?

ジュードの奴、一人で思い詰めちまっててさ。

ミーシャにもレイジスにも、他の誰にもこの話はしてねぇんだ。

あんたが内乱の日にした事を二人に言う前に、ちゃんとした真実を知りてぇ……って。

……なぁ、実際どうなんだ?

あんたが国王夫妻を殺したのには、何かの理由があったのか?

あんたが内乱の首謀者だったってんなら、何で今の今まで、こんな塔のてっぺんに幽閉される事になっちまったんだ?

あんたを幽閉してんのは、セルジオだよな?

一体どんな成り行きが……」


問いかけた、ところで。


不意に階段の先に、ゴールが見えてきた。


一番下の段を下りると、そこは踊り場くれぇのちょっとしたスペースになっている。


そして、その奥には一つの扉があった。


素材は最上階の正規の扉と同じ、鉄扉に見えた。


俺は一番最後の段を降りると、そこでふぅと一つ息を吐き、アルフォンソを一度その段の上に降ろした。


一旦休憩を挟みたかったからだ。


だいぶ軽くなっちまってるとは言え、人一人抱えてこの長い階段を降りてくるってのは中々だぜ。


明日は全身筋肉痛になっちまってるかもしれねぇ。


俺はちょっとの間その場に立ったまま休憩しつつ、アルフォンソの顔をもう一度よく見る。


そうして、


「──アルフォンソ、」


再度、声をかけた。


ここを逃したら、たぶん話を聞ける機会はもうねぇかもしれねぇ。


少なくともアルフォンソが見つかったって事で皆大騒ぎになるだろうから、後でこっそり話を聞けたとしても大分先の事だ。


ジュードに任せとけなんて言っちまった手前もあるが、俺自身も知りてぇと心から思っている事柄だった。


「一年前の内乱、あれは本当にあんたが企てた物だったのか?」


問う。


そうしてしばらくアルフォンソの顔を真剣に見ていたが──……残念ながらやっぱり、アルフォンソからは何の反応も得ることが出来なかった。


──ジュードに、何て言ったもんかな。


カリカリと頭を掻きながら、そんな事を思う。


正直な話、今のアルフォンソはこんな状態だし、ジュードと俺がこのまま口を(つぐ)むってんなら過去の事が今更世間に露見する事はまずねぇだろう。


アルフォンソは単なる内乱の被害者(・・・)で、セルジオに塔に軟禁され精神を病んじまった。


それだけで、片がつくはずだ。


ミーシャもレイジスも誰も、国王夫妻が誰に(・・)殺されちまったのかなんて今更強く追及したりはしねぇだろう。


アルフォンソが内乱に関わっていたらどうしようかと悩んでたジュードも、それで心置きなくレイジスのサランディール奪還に協力出来るってなもんだ。


だけど、なぁ。


どーにもこーにも、スッキリしねぇのは確かだぜ。


大きなモヤモヤを抱えたまま、それでも仕方なしに息を吐き、アルフォンソに背を向けて腰を降ろし背負おうとする。


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