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なのになんだってあいつは……。
……ああ~、本当によく分からねぇ。
今日見つけた二つの通路の入口だって開くのに相当手が込んだぜ?
地下通路の入口があるんじゃねぇかと思ってキッチリ探さねぇ限り、そう簡単に見つかるモンじゃねぇんだ。
本当に一体、どういう理由でそんなモンを知ってたんだか。
自分で偶然見つけたのか?
それともダルクがジュードに教えた様に、誰かがダルクに秘密の入口の場所を教えたのか……。
……まぁ、それはともかくとして。
「つまりはお前が知ってる秘密の入口は、ダルクがお前に教えたそこ以外にはねぇって事だな?」
言うと「ああ」と明確に答えが返って来る。
そしてダルクが他にいくつの秘密の入口を知っていたのかは分からねぇ──と。
~ったく。
あいつの事を考える必要なんかねぇってぇのにどーしてこうそっちに頭が向いちまうんだろうな。
今はともかく、アルフォンソの事だ。
俺やジュードはもちろん、ガイアスやダン、マーシエまでもが一年かけて散々手掛かりを探して何にも出てこねぇってぇのはどういうことなのか。
そもそもがさ。
アルフォンソが内乱の首謀者だったかもしれねぇ事、ミーシャやレイジスはもちろん、ずっとサランディールにいたガイアス達も誰も、全く気づいてなさそうってのが不思議なんだよ。
あんな大それた事、全てをたった一人で実行出来た訳がねぇ。
国王と王妃を殺すだけってんならまだしも、事はしっかり『内乱』として成り立っている。
ミーシャやレイジスが城を追われて、そのまま今日まで帰って来る事が出来ずにいるのがその証拠だ。
城の中の床が血溜まりになる程人もたくさん殺されたらしいし……。
アルフォンソが首謀者として一部の人間でもなんでも煽動したんなら、それなりに誰かに気づかれそうなモンだ。
実は煽動したのは別の人間なんじゃねぇのか……?
例えば今サランディールを牛耳ってる宰相セルジオとか。
あの内乱で誰が一番徳をしたかって、やっぱりそれは宰相だ。
宰相ならアルフォンソの事も何か知ってるかもしれねぇ。
……けど。
ただの一介の新人メイドが宰相に近づくのは結構骨が折れそうだな……。
◆◆◆◆◆
翌日──。
早速俺は、マーシエやガイアスよりもセルジオの実態を知ってるだろう内務卿のダンに頼んで、奴の普段の行動について教えてもらう事にした。
毎日の日課、立ち寄る場所、取巻き連中──こいつはもしいたら、の話だったがもちろんいた──の行動も含めてダンが奴の事に関して知る事はとにかく何でも、だ。
それで分かった事はいくつかある。
セルジオは普段やけに規則正しい行動を取っている。
朝仕事を始め出してからその日一日終えるまで、寸分違わずいつも同じルーティーンで行動しているらしい。
会議や仕事上に関する行動はもちろん、休憩の時間やそいつをどこで取るのか、その過ごし方まで本当にキッチリと、だ。
まぁ、毎日の行動がそんなに事細かに決まってるってんなら俺としてはこんなにやりやすいこたぁねぇ。
奴に自然に近づくにゃあどーしたらいいか考える手立てになるからな。
それに奴の取巻き──こいつも話で聞く限り、まぁまぁ使えるネタがありそうだ。
奴に普段金魚のフンの如くくっついて回ってる取巻きは二人。
一人は士官で一人は文官らしいんだが、それぞれセルジオの長男と次男らしい。
士官の長男は女好きの乱暴者で、部署内で何度も問題を起こしては謹慎処分を食らって……っていう典型的なバカ息子らしい。
それでもクビにならなかったのはもちろん『セルジオの息子だから』の一点に尽きる。
内乱が起こっていよいよセルジオの天下になると、丁度その頃食らっていた謹慎も解け──非常時での人手不足を理由にってんだから簡単なモンだよな──そこからはセルジオの護衛も兼ねた金魚のフンになって毎日行動してるって話だ。
親父さんが目を光らせてるせいもあるらしいが、そうなってからはそいつの問題事も大分減ったらしい。
さて、こーなると残りの次男の方だが、こいつは兄貴とは違って中々の優等生肌みてぇだ。
品行方正で頭も良く、兄貴と違って揉め事も起こさず物静かな性格らしい。
いずれは親父さんの後を継いで宰相になる予定で、その為に親父さんの横について仕事を学んでるとか。
まぁ、宰相になる予定って、セルジオの野郎が勝手にそうさせよーとしてるってだけの話らしいんだけどな。
今の所そいつに異を唱えられる人間もいねぇから順当にこのまま行けばそうなるんだろう。
この取巻き二人、特に女好きって話の兄貴の方に近づくのは『リア』にとっちゃあ朝飯前だが、こいつはどーもあんまり気が進まねぇな。
ヘンに気に入られて絡まれたり触られたりしてよ、もし男だってバレたら相当ヤベェし。
それに得られる情報はあんまりねぇんじゃねぇかと思うんだよな。
ダンやレイジスの話を聞く限り、セルジオってぇのはかなり用心深い性格みてぇだからな。
普段から問題ばっか起こして謹慎処分なんか食らってるよーな奴に、重要機密を漏らしたりはしねぇだろ。
と、いう事はだぜ。
物静かで優等生肌って噂の次男に近づくのがひとまずの策としては手っ取り早そーだ。
次の宰相候補になってるくらいだしよ、親父さんから色々な事を聞かされてる可能性も高いし、何より『リア』として近づいても兄貴程は危なくなさそうな気がする。




