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◆◆◆◆◆



「……で?」


と いかにもかったるそうに口を開いたのはゴルドーだった。


客の誰もいないカフェの中、いつものカウンター席に腰を下ろしながらの事だ。


ブラインドの下りた窓の外はまだ暗い。


リッシュやロイたちと別れてから数十分、きっとゴルドーが来るだろうと予測してここに残っていたが、案の定だった。


カフェの店長は微笑みを最小限に抑えながら──そうでないとゴルドーが気を悪くする為だ──言う。


「万事、うまく収まりました。

リアさんの提案でね。

ロイと少年を、許すことにしましたよ」


「──そうか」


ゴルドーが物思いに耽りながら応える。


店長はそれに何も言わず、ゴルドーの目の前に一杯のコーヒーを差し出した。


ゆったりと漂う湯気がカップから上へと上がっていく。


コーヒーのいい香りが店内に満ちていった。


「報酬は予定通りの額をお渡ししようと思いますが、それでよろしいですかな?」


問うと、ゴルドーがふと店長の言葉に気がついたように「ああ」と簡単に返事した。

「あんたがそれに見合う働きをしたって思うんなら、俺から言うこたぁ何もねぇ。

報酬は明日にでもラビーンとクアンのバカコンビに預けよう。

あの二人、リアとかいう奴にゾッコンらしいからな。

ネコババなんかはしねぇだろうぜ」


へっと鼻で笑って言うのに、店長は微笑みながら頷いた。


そうして それにしても、と言葉を続ける。


「──昔を思い出しますな。

こんなこともあるのかと──不思議なことです」


「………」


店長の言葉に、ゴルドーが眉を寄せて黙したまま目の前に置かれたコーヒーのカップを見やる。


ゆったりと漂う湯気が豊かな香りを燻らせていた。


ゴルドーは何も言わずカップを持ち、口をつける。


店長はそんなゴルドーを見つめた。


「オーナーの“投資”は、間違っていなかったと思いますよ。

今も、昔も」


店長の言葉に──ゴルドーは遠く視線を外したまま、「そうだといいが」とだけ答えたのだった──。

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