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水の中

作者: 空島 米

水の中を歩いている

手も足もうまく動かない

ぐっと息を止めたまま

水の底を歩いている



耐えがたい程は苦しくない

だけど苦しくなくはない

ぐっと息を止めたまま

同じ景色を歩いている



昔は泳いでいた気がする

身体は浮いていた気がする

波に流されていただけかもしれない

ともかく苦しくなかったと思う



だけど少しずつ時間は流れて

身体は大きくなっていき

そのまま段々沈んでいって

今では息を止めたまま、水の底を歩いている





いちど大きく、深呼吸をしてみたい

重たい水を肺に全部飲み込んで

届かぬどこかへ吐きだすのだ

けどきっと、その前に溺れてしまうから

ずっと息を止めている



いつか歩くのもやめていて

水底から空を見上げる

日の光は届いてなくて

同じ景色が続いている



誰かに手を差し伸べられるのを待っている

そのくせもし手を取ってくれた人が

自分の重さに、呆れてしまったらと怖くて

頭を抱えてしゃがみこむ

景色は何にも見えなくなる





息苦しさが酷くなる

どんどん耐えられなくなっていく





とうとう我慢が出来なくなって

思わず息を吸い込んだ

肺に水は入ってこない

何故だか身体が軽くなって



ここが水の中じゃないと知る



ゆっくりと顔を上げてみる

いろんな人が歩いている

自分の前にも後ろにも

みんながみんな歩いていた



そのまま空を見上げてみる

日の光はみんなを照らし

その眩しさに目を細める

光は自分も照らしていた





もういちど、深く息を吸ってみる

もっと身体が軽くなる

自分の横を、一人の誰かが追い越した

自分も一歩、踏み出した



ここは水の中じゃない

流れもしないし泳げない

ここは水の中じゃない

だから、いつか飛べるかもしれない



一歩、一歩、歩いていく

新しい景色が見えてくる

それが素敵なものかは分からない

それでも足は止まらない



たった一つ分かるのは

それは自分の知らない景色

息が上がって肺は痛む

それでも助走をつけるように



自分は世界を駆けていく























































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