022 ◆祝・tuitterフォロワー1000人記念配信◆
ストックが尽きました。
とりあえず、ペースを保つことのできる間は日刊投稿を続けます。
『朝から晩まで輝く太陽、多々良まひるです。こんばんは、お客様』
――きた
――フォロワー1000人おめ
――こんまひる
――おめでとう!
コメントの流れが速い。
こういう記念配信だからこそ来てくれた人も多いだろうし、リピーターになってもらえるよう撮れ高多めを目指したい。
『ありがとうございます。それじゃ早速なんですけど、企画の方やっていきますね。あっ、その前に配信開始ツイートだ』
ネット上のコンテンツにおいて『3クリックルール』というものがある。
『ユーザーは、3クリックの間に目的のコンテンツに辿りつけなければ去ってしまう』という法則だ。
それに倣って、俺は配信ではさっさとその回の本題に入ることにしていた。
『まずは……どん! 台詞リクエスト! 事前にフォームから送っていただいたリクエストを私が読み上げていきます。送ってくださった皆さん、感謝!』
――読まれるといいなぁ
――『もう朝だよ。早く起きないとイタズラしちゃうぞ』で頼む
――うおおおおおお
――おっさんのリクエストをおっさんが読み上げる地獄
『あっ、今書いても駄目ですよ~。異常なリクエストはね、もう充分に間に合ってるんで。お前らマジで頭おかしいぞ』
1人何個までという制限をかけていなかったからか、かなりの量が届いていた。
とても全部は読み切れないので、面白くなりそうなものを俺なりに厳選した。
『では1つ目いきます』
んっんっと喉を整えてから読み上げる。
『結婚って兄妹じゃできないんだよね。ううん、なんでもない』
――すき
――できるよ
――兄弟なんだよなぁ
――は? 100回するが?
『こんなのばっか届いてるんですよ……恥を知ってほしいですね。どんどんいきます』
かわいい系とネタ系を、なるべくバランスよく読み上げていく。
『えっ、残業代出てないんですか!? 転職活動、頑張ってください――送ってくださったおでん命さん、上手くいくといいですね』
『先輩。バイト代入ったんですよね? 私、クレープ食べたいなぁ』
『この豚野郎! お前なんか九州名産の黒豚だよ!! ――これ貶してるの? 褒めてるの?』
『次のこれ、男声でやってほしいって書いてあるんですよね。えーと……兄さん、そこの接着剤取って――どういう気持ちでリクエストしたんだよ』
反応は上々だった。
視聴者数は74人。
歴代最高でこそないが、前回より多い。
ボイチェンを使っていないことも、高評価の理由になっているのだろうか。
ノイズのないナチュラルな声になっているのは間違いないはずだ。
雑談を挟みつつ、30分ほどリクエストされた台詞を読んでいった。
『台詞はこんなところですかね。続いて2つ目の企画……これは本当に嫌なんですけど、皆さんがどうしてもやれって言うからやります』
これは偽らざる気持ちだった。
何故なら――
『ホラーゲーム、本当に苦手なんですよね』
俺はビビりなのだ。
幽霊やらが怖いというより、びっくり系が苦手だ。
本日プレイするゲームは『あくまのやかた』。
主人公は暗い洋館の中、コアラのような姿をした凶悪な悪魔から逃げながら出口を探すことになる。
ちなみに、俺が夜長の配信を盗み聞きしてしまったときにプレイされていたゲームだ。
画面は見ていないので、実質初見プレイ。
『電気消しますね』
これは七重のアイデアだ。
暗闇でプレイすることによって、恐怖が3割増しになるらしい。
俺はいったん席を立ち、部屋の入口のスイッチで照明を落とした。
『それでは始めて……ひっ!?』
ゲームを起動した直後、画面に超アップで悪魔の顔が表示された。
開幕から驚かせやがって。
心臓止まるかと思っただろ!
――そこ初見殺しだよ
――悲鳴も女の子で草
――鼓膜破れた
『……だいたい分かりました。もう驚きませんよ』
王道RPGのような、2D見下ろし型の視点のゲームのようだ。
物語が始まると、主人公の少女――つまり俺が雨の中を彷徨っている。
少女は洋館を見つけ、そこで雨宿りすることにした。
そこが恐ろしい悪魔の居城とも知らずに。
『主人公の名前は、ま、ひ、る……と』
しばらくすると雨は止んだが、入ってきた扉が何故か開かなくなっていた。
この手のゲームではお約束の展開。
俺はこれから、手にした懐中電灯の僅かな明かりだけを頼りに、別の出入り口を探さなくてはならない。
『うわ、見える範囲めっちゃ狭い……やだやだやだ』
――夜長ちゃんよりびびってるwww
――早く行けや! 男だろ!
――男……? 女の子だが?
『このドア開けなきゃ駄目? 開けたら絶対に何か出てくるでしょ! 分かってるから!!』
ガチャッ。
『……いなかったわ』
――草
――これクリアするのに朝までかかるな
――薄目になってるのかわいい
心臓に悪い。
できれば今すぐにやめたい。
でもリスナーは喜んでくれてるし……そうだ!
『見つけました。必勝法』
1歩進む。
メニュー画面を開く。
セーブする。
メニュー画面を閉じる。
1歩進む。
メニュー画面を開く。
セーブする。
メニュー画面を閉じる。
『これぞ、まひる式牛歩戦術――アッッ!!!』
急に床が抜け、1つ下のフロアに落ちた。
特に怪我をしたような描写はないが、プレイヤーの俺へのダメージは深刻だった。
『びっくりした……』
――必勝法とはなんだったのか
――鼓膜とりかえてくる
――あまりに早いフラグ回収、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
『ちょっと休憩しましょう。エナドリ飲みます』
プレイ時間15分にして限界を迎えつつあった。
俺は気持ちを落ち着けるため、エナドリの缶を開ける。
大きく息をついてから、ゆっくり飲んだ。
『えっ? 夜長お嬢様、最後までやったんですか? 凄い……』
コメントによると、夜長はこのゲームをしっかりクリアしたらしい。
夜長――はともかく、七重は別に怖がりじゃないもんな。
キャラを作ってなければ人並みよりスムーズに進められたはずだ。
俺は……とりあえずあと15分だけ頑張ったら終わりにしよう。
そうすれば。配信時間が1時間になってちょうどいい。
『お待たせしました。では、もうひと頑張りしま……えっ?』
唐突に周囲が明るくなった。
ゲームの中の話ではない。
俺の部屋が、明るくなった。
背もたれに身を預けて天井を見上げると、蛍光灯が点いている。
なんで?
今、家には俺だけじゃん?
俺の部屋の電気を点けられる人間はいないはずじゃん?
だったら――どういうことだよ。
俺は、ゆっくりと振り向いた。
部屋の入口に、沙都が立っていた。
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8月30日 23時45分
◆多々良まひるの部屋◆
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