弟子入り
少し、話がしたい。そう言って、俺は痣火と現在二人になっている。俺は真剣な表情で、痣火はにやにやと笑みを浮かべて向かい合っている。見事に対照的。しかし、何だか途轍もなく嫌な笑みだ。
まあ、良いか・・・
「で、少年。私に何か用か?」
「痣火さん、俺を弟子にして下さいっ!!!」
頭を下げて、俺は言った。その言葉に、痣火は相変わらずにやにやと笑みを浮かべている。その笑みは何処か人外めいていて、心の底を覗き込まれている気がする。背筋に冷や汗をかく。
俺としては本気で頼んでいる。相手は異能者の集団、恐らく俺では逆立ちしても勝てないだろう。
だから、鍛える必要があった。俺、本来は一般人だしな。
待つ事十秒くらい、そろそろ不安になってきた頃に痣火は口を開いた。
「良いだろう。しかし、条件がある」
「条件?」
そこはかとなく不安になって問い返す。そんな俺に、痣火は言った。途轍もなく嫌な笑みで。
・・・・・・・・・
それから半時間程後・・・
その後場所を移し体育館跡。其処に俺と痣火、そしてマキが居た。俺と痣火は二人向かい合い、その手には剣道用の竹刀が握られていた。マキは深い深い溜息を吐いて俺達を見ている。
そりゃそうだ。何せ、弟子入りの条件がかなりの高難易度だったからだ。その条件とは・・・
———剣術勝負で私に一本でも取れたら弟子入りを認めよう。
まあ、そういう訳だ。やれやれ、俺はうんざりした顔をした。そんな俺を、マキは心底同情するような表情で見ている。うん、何だか泣けてきた。
相手は剣道の段持ちを瞬殺すると豪語するようなヤバい奴だ。侮っていては痛い目を見るだろう。
まあ、別に良いか。そう思い、俺は竹刀を構えた。痣火が獰猛に笑う。
「来いっ!!!」
「せあああっ!!!」
一瞬の出来事だった。ぱああんっと、竹刀の軽快な音が響く。俺の頭がしびれる。
一瞬、思考が停止する。一体、何が起きた?
「まずは面だ」
「っ」
全く見えなかった。単純に速すぎる。それに、この残留するようなしびれ。この女、強い。
只者では無いと、そう俺は改めて判断した。目の覚めるような一撃だった。再び竹刀を構える。
集中力を極限まで高める。一撃で良い、一撃相手に当てる事にのみ集中する。
———眼が、熱く熱を帯びてきた。意識が昂揚してきた。
「・・・・・・此れは」
痣火の瞳が、鋭くなる。その構えに、隙が一切無くなる。この時、恐らく彼女は本気になった。
俺は、動いた。
「ふっっ!!!!!!」
刹那、俺は一息に距離を詰めて竹刀を痣火に叩き———
ぱあんっっ!!!!!!
俺の頭に鋭い痛みが奔り、そのまま俺は意識が暗転した。・・・・・・え?
痣火最強伝説・・・




