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日常の壊れる最悪の非日常  作者: ネツアッハ=ソフ
非日常との出会い
6/27

覚醒と覚悟

 俺は、学校の廃墟(はいきょ)にある一室でうずくまっていた。別に、気分が悪い訳ではない。只、今は独りで考えごとに集中したいだけだ。少しの間、独りで居たいだけだ。


 ・・・どうして、こうなったのか?———(わか)らない。


 ・・・何が、悪かったのか?———解らない。


 ・・・世界を()やして、何になる?———解らない。


 ・・・俺は、一体どうすれば良い?———知るかそんなこと。


 何もかも解らないんだよ。どうすれば良いのか、解らないんだよ。どうしてこうなったのか、何もかもが解らないんだよ。一体俺にどうしろって言うんだよ?


 心の中で自問自答を繰り返すも、結局答えなど出なかった。解らないと繰り返すばかりだ。


 膝を抱え、俺は思考の渦に没頭(ぼっとう)する。もう、なにも解らなかった。どうしようもなかった。


 もう、思考するのも面倒臭い。そう思い始めた、その時・・・俺の隣に、誰かが座った。


「・・・・・・マキ?」


随分(ずいぶん)と、落ち込んでいるじゃない」


 その一言で、俺は自覚した。そうか、俺は落ち込んでいるのか。落ち込んでいたのか。


 少し、俺は皮肉気に笑った。何だか、自分がおかしく思えたからだ。


「ああ、そうかもな。俺自身、こんなに落ち込むとは思わなかったけど・・・」


「そうね、私もそうだった。私も、失った直後はこんな感じだったわ」


 ああ、そうだな。マキもきっと、同じなんだな。きっと、これが失う辛さなんだ。そう思うと、マキは本当に凄いと思う。本当は誰より辛い筈なのに、それを隠して頑張ってきたんだ。


 ・・・きっと、マキは凄いと思うから。そんなマキが、とても(まぶ)しく思えてきた。それは、本当は気のせいなのかも知れないけど。少なくとも、マキはきっと凄いのだろう。


 よく、耐えきれたと思う。よく、ここまで頑張れたと思うから。


「マキ、ちょっとごめん・・・」


「うん?何・・・って、え?」


 俺は、マキをぎゅっと抱き締めた。強く、強く、しっかりと抱き締めた。


 マキは目を白黒させて俺を見る。俺は、それでもしっかりとマキを抱き締めて(はな)さない。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・貴方、泣いてるの?」


「すまない。少しの間、このままで居させてくれ」


 そう言うと、仕方ないとばかりに肩を(すく)めてマキは俺を抱き締めた。しばらく抱き締め合う俺達。


 やがて、俺はマキをそっと放した。マキは苦笑を浮かべて俺を見る。


「どう?落ち着いた?」


「ああ、ありがとう。助かった」


 そう言い、俺は僅かに笑みを浮かべる。マキも、そんな俺に笑みを浮かべた。


「俺、決めたよ」


「うん?何を?」


 俺は、マキに宣言するように言った。マキに笑みを向けて、俺は言った。


「俺は、戦うよ。俺自身の日常(セカイ)を取り戻す為に」


          ・・・・・・・・・


 この時、俺は気付かなかった。俺の()が、黄金に輝いていたという事に。

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