覚醒と覚悟
俺は、学校の廃墟にある一室でうずくまっていた。別に、気分が悪い訳ではない。只、今は独りで考えごとに集中したいだけだ。少しの間、独りで居たいだけだ。
・・・どうして、こうなったのか?———解らない。
・・・何が、悪かったのか?———解らない。
・・・世界を燃やして、何になる?———解らない。
・・・俺は、一体どうすれば良い?———知るかそんなこと。
何もかも解らないんだよ。どうすれば良いのか、解らないんだよ。どうしてこうなったのか、何もかもが解らないんだよ。一体俺にどうしろって言うんだよ?
心の中で自問自答を繰り返すも、結局答えなど出なかった。解らないと繰り返すばかりだ。
膝を抱え、俺は思考の渦に没頭する。もう、なにも解らなかった。どうしようもなかった。
もう、思考するのも面倒臭い。そう思い始めた、その時・・・俺の隣に、誰かが座った。
「・・・・・・マキ?」
「随分と、落ち込んでいるじゃない」
その一言で、俺は自覚した。そうか、俺は落ち込んでいるのか。落ち込んでいたのか。
少し、俺は皮肉気に笑った。何だか、自分がおかしく思えたからだ。
「ああ、そうかもな。俺自身、こんなに落ち込むとは思わなかったけど・・・」
「そうね、私もそうだった。私も、失った直後はこんな感じだったわ」
ああ、そうだな。マキもきっと、同じなんだな。きっと、これが失う辛さなんだ。そう思うと、マキは本当に凄いと思う。本当は誰より辛い筈なのに、それを隠して頑張ってきたんだ。
・・・きっと、マキは凄いと思うから。そんなマキが、とても眩しく思えてきた。それは、本当は気のせいなのかも知れないけど。少なくとも、マキはきっと凄いのだろう。
よく、耐えきれたと思う。よく、ここまで頑張れたと思うから。
「マキ、ちょっとごめん・・・」
「うん?何・・・って、え?」
俺は、マキをぎゅっと抱き締めた。強く、強く、しっかりと抱き締めた。
マキは目を白黒させて俺を見る。俺は、それでもしっかりとマキを抱き締めて放さない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・貴方、泣いてるの?」
「すまない。少しの間、このままで居させてくれ」
そう言うと、仕方ないとばかりに肩を竦めてマキは俺を抱き締めた。しばらく抱き締め合う俺達。
やがて、俺はマキをそっと放した。マキは苦笑を浮かべて俺を見る。
「どう?落ち着いた?」
「ああ、ありがとう。助かった」
そう言い、俺は僅かに笑みを浮かべる。マキも、そんな俺に笑みを浮かべた。
「俺、決めたよ」
「うん?何を?」
俺は、マキに宣言するように言った。マキに笑みを向けて、俺は言った。
「俺は、戦うよ。俺自身の日常を取り戻す為に」
・・・・・・・・・
この時、俺は気付かなかった。俺の瞳が、黄金に輝いていたという事に。




