師匠登場
「と、とりあえずっ‼貴方には一緒に来てもらうわよ!!!」
「・・・?何処に?」
「っ、良いから来るのっ!!!」
マキは赤面しながら俺を引っ張っていく。拒否する理由も特に無いので、俺は黙って付いていく。俺の手を引きながら、マキは真っ赤に顔を染めている。
しかし、まあ・・・・・・
「可愛いな・・・」
「っ!!?」
マキの肩がびくっと震えた。きっと目を吊り上げて俺を睨む。
ん?マキの顔が余計に真っ赤になった?真っ赤な顔で、マキに睨まれる。いや、何故だ?俺、一体何をしたと言うんだ?うーん、解らん。
・・・まあ、良いか。俺は思考を放棄する。マキも、溜息を吐きながら俺を引っ張っていった。
マキの手を握り締めると、マキも俺の手を握り返してきた。マキの手は、温かかったさ。
やがて、俺とマキは廃墟の一室に着く。其処には、一人の女性がソファに座っていた。女性の傍には一振りの日本刀が立て掛けている。女性は俺を見て、にやにやと笑っていた。
一目で俺は理解した。この女、俺の苦手なタイプだ。
「やあ、少年。よく来たね」
「はぁ、貴方は誰ですか?」
女性に俺は気のない返事を返しつつ、名を問う。女性はかははと楽しげに笑い、頷いた。
「失礼、私の名は痣火。剣神と呼ばれたしがない剣術家でその娘の師匠だ」
「はぁ、俺の名は遠藤宙です。・・・・・・って、師匠?」
「うむ、師匠だ」
マキの師匠を名乗る女性、痣火は朗らかに笑った。えっと、この女性が師匠?俺はマキの方を見る。
マキは静かに頷いた。どうやら、本当に師匠らしい。
「ええ、その人は私の剣の師匠よ。ちなみに、剣の腕は私の千倍は強いわ」
「せ、千倍っ!!?」
俺はぎょっとして、痣火の顔を凝視した。痣火はにこやかに笑いながら、それに頷いた。全く信じられないと俺は一瞬、否定的に感じた。何故なら、マキの剣の腕は異能者とも充分渡り合える物だからだ。
その千倍と言われても、全く予想がつかない。というか、理解が出来ない。
当の痣火はかははと楽しそうに笑いながら、それを肯定した。
「まあ、嘘じゃないな。というか、マキは正直まだまだ弱すぎるんだよ」
「私、一応剣道五段くらいの実力はあるんだけど?」
「かははっ、たかが五段くらいで甘い甘いっ。私の弟子を名乗るなら、剣道の段持ちくらい余裕で瞬殺するくらいは無いとなあ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・うわぁ。
剣道の段持ちを余裕で瞬殺って・・・。やべえ奴じゃねえか。俺は引き攣った顔で笑う。
マキも、口元を引き攣らせて黙り込んでいる。この女、色々ヤバい奴かもしれない。俺は、こっそりとそう感じたのだった。そんな俺達を他所に、痣火本人はかははと楽しそうに笑っていた。
もう、何がそんなに楽しいんだか?理解出来なかった。
剣の師匠、痣火登場。




