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日常の壊れる最悪の非日常  作者: ネツアッハ=ソフ
非日常との出会い
3/27

日常とのお別れ

「・・・・・・・・・・・・此処は、何処(どこ)だ?」


 ふと、目が覚めた。知らない天井だった。というか、知らない場所だ。


 ・・・ていうか、何処だ?此処は?周囲を見回す。どうやら、此処は何処かの廃墟(はいきょ)らしい。廃墟?


 何で俺は廃墟に居るんだ?疑問は尽きない。


 ・・・すると。


「・・・・・・目が覚めた?」


 ()めた声が聞こえた。振り返ると、其処には俺と同い年くらいの少女が、俺を睨んでいた。はい?


 何故、俺は少女に睨まれているんだ?俺は混乱する頭を必死に働かせて、記憶を手繰り寄せる。俺は何故こんな少女に睨まれているのか?考えて、考えて、考えて・・・


 うん、やはり少女に睨まれる覚えがねえな。全く記憶にねえわ。


 しかし、ふと思い出した。・・・意識を失う直前の記憶を。


 そうだ。俺はあの戦いの後、意識を失って倒れたんだ・・・・・・。思い出した瞬間、俺は喉元に刀の刃を突き付けられる。見ると、少女が俺に冷めた視線で刀の刃を向けていた。


「・・・・・・何の真似(まね)だ?」


「答えなさい。貴方は異能者(いのうしゃ)?」


 何処までも冷徹(れいてつ)な声音。


 俺の問いに答えず、少女は俺に質問を返してきた。俺は、黙って少女を睨み付ける。しかし、少女はそれを一切無視して続ける。


「答えなさい。貴方は異能者?」


「まず状況を説明しろよ。俺は一般人だぞ?まずは状況の把握(はあく)が先だろう?」


「・・・・・・・・・・・・」


 俺は心の動揺を必死に隠し、質問を投げ掛けた。そうだ、まずは状況の把握が先決だ。


 少女の瞳が鋭さを増す。しかし、知った事か。俺は真っ直ぐ少女の瞳を見返す。


 少女はしばらく、俺に刀を突き付けた状態で考え込む。俺も、しばらく両手を頭の上に上げたままその場に座り込んだ。俺と少女の視線が交わる。


 やがて、少女は溜息と共に刀を下げる。


「把握したわ。貴方は一般人、これに間違いは無いみたいね」


「おい、状況を説明しろよ。一人で勝手に納得するな」


 俺の言葉をまたもや無視し、少女は言った。俺の都合など、少女にとって一切どうでも良いのだ。


「良い?これからはあの出来事を一切忘れて貴方の日常に戻りなさい。もう、私に関わらないで」


「そんなの納得出来るか‼俺は状況を説明しろと言っているんだ!!!」


「黙りなさい、貴方の意見は聞いていないわ」


 瞬間、俺の喉元に再び刀が突き付けられた。その刃の鋭さに、俺の首の皮が一枚切れる。しかし、そんな事構うものかよ。俺はこの状況を知りたいんだ。


 俺は、黙って少女を睨み付ける。少女の視線の鋭さなど、一切関係ない。


「俺は、この状況を知りたいと言ったんだ。一度関わっておいて、それではいさようならなんて、俺のプライドが許さねえよ!!!悪いかっ!!!」


「・・・・・・・・・・・・っ。世の中には、知らない方が良い事もあるでしょう?それとも、それも分からない程に貴方は馬鹿(ばか)なのかしら?」


「はっ、そんなの知らないね。俺は俺の思ったまま生きるんだ。下らない事を言うなよ」


「・・・・・・っ」


 少女の表情が一瞬憎悪に(ゆが)んだが、それでも俺は少女から目を離さない。決して、少女から視線を逸らしたりはしない。しばらく、俺と少女は睨み合う。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・はぁっ


 少女は溜息と共に、俺から刀の刃を下ろした。その視線には呆れと侮蔑(ぶべつ)が混じっている。


「良いでしょう。今更後悔しても遅いからね?」


 そう言って、少女は俺を睨み付けて言った。はっ‼そんな脅し、俺には効かねえよ。


 俺は鼻で笑い飛ばした。少女は心底呆れた顔で語り出した。


          ・・・・・・・・・


 ・・・まず、少女の身の上から語ろう。少女は至って平凡な家庭に生まれた。


 何処までも平々凡々な、一家庭。そんな中、彼女は生を受けて育った。


 少女の名前はマキ。平凡な家庭で育ち、平凡な家庭で生涯を終える筈だった一般人だった。


 ———そう、その筈だったのだ。決して(こわ)れる筈の無かった日常だった。


 しかし、彼女の人生は無残に打ち砕かれる。異能者の手によって。


 辺り一面、火の海だった。その中にマキは呆然と立ち尽くしていた。足元には、家族だった者達の死体が一面に転がっていた。皆、無残に死んでいた。


 目の前には家族を殺した男が一人。じっと彼女を見ている。マキは只、呆然と立ち尽くすのみ。それしか今のマキには出来なかった。只、それしか出来なかったのだ。


 異能者の男は目を鋭く細めて彼女を見た。びくっとマキは(ふる)える。


 異能者の男は言った。生きろと。生きて、何時か俺に復讐(ふくしゅう)を果たしてみろと。生きて、何時かその命の価値を俺に示してみせろと。


 そう言って、男はマキの前から姿を消した。マキは只、呆然と立ち尽くすしかなかった。


 当時の彼女には、それしか出来なかった。それが、とても(くや)しかったのを今でも覚えている。


 ・・・その後、マキは復讐の為に自らを鍛え上げた。ひたすら、剣を振るい続けた。


 復讐の鬼と化し、ひたすら剣を鍛え続け、復讐の為だけに生きると(ちか)った。


 そして、その傍ら異能者の男の情報を集めた。徹底的に情報収集をした。そして、マキはその異能者の男の情報に行き付いた。ついにマキは男の足掛かりを得たのだ。


 その男は、異能の集団の長だった。世界の裏で、異能者を束ねて破壊活動をしていたという。


 その破壊活動に、一体何の意味があったのかは分からない。もしかしたら、本当はその行為にも意味があるのかもしれない。しかし、犠牲者は自分だけではなかった。


 大勢の人達が、その異能の男の犠牲になっていたのだ。それだけで、復讐の理由には充分だった。


 マキは復讐の為に動き出した。異能者の集団に独り、喧嘩(けんか)を売ったのだ。


          ・・・・・・・・・


「そして、喧嘩を売った先に俺が居た訳か」


「・・・・・・ええ。まさかあんな所にまだ人が居るとは思っていなかったけどね」


 そう言って、マキは肩を(すく)めた。そして、俺を睨み付けて言った。


「で、どうする?此処で手を引き、日常に帰るなら私も何もしないけど?」


 マキは刀の柄に手をやり軽く叩いた。しかし、それは暗に此処で手を引いて欲しいという事だろう?


 俺はその願望を軽く鼻で笑った。マキの片眉がピクリと動く。


「はっ、俺を見くびるなよ。此処で手を引くなんて選択肢、最初(ハナ)からねえよ」


「・・・・・・貴方、馬鹿なの?」


 マキは呆れた顔で刀の柄を握る。しかし、俺はそれを笑い飛ばす。


「それこそ知るかよ。俺は俺の思った通り生きるだけだ。それに、な」


 其処で、俺はマキの方を真っ直ぐ見詰めて言った。


「お前の過去を聞いて、それで尚お前を(ひと)りになんてさせるかよ」


「・・・・・・っ、な!!?」


 マキは一瞬で顔を真っ赤に染めた。そして、俺を必死に睨み付けて刀の刃を俺の喉元に向けた。


 しかし、それでも俺は一向に気にしない。俺はマキの瞳を真っ直ぐに見詰め返す。


「俺は決めたぞ。俺はお前が何と言おうが、お前に付いていく。お前を意地でも独りにさせない」


 ———これは決定事項だ。


 分かったか、と俺はマキに全力で宣言する。マキはその言葉に、真っ赤な顔で(わめ)く。


「馬鹿なの!!?貴方はそれで善人を気取っているつもり!!?善意の押し付けは止めて!!!」


「はっ、そんな訳あるか‼俺は俺のわがままを通しているだけだ!!!それの何が悪い!!!」


「っ、馬鹿なの!!?」


 マキは真っ赤な顔で喚く。しかし、俺には関係(かんけい)ない。俺はもう決めたんだ。俺は俺の意地を通す。


 マキがどう言おうが、此処からは俺の自分勝手な自己満足だ。どうなろうが知った事か。


 俺は、マキに向かって手を差し伸べた。


「これからもよろしくな。マキ」


「・・・・・・・・・・・・本当に、勝手(かって)な人」


 そう言いながらもマキは俺の手を取った。俺がにっこりと笑い掛けると、マキは顔を()めた。

日常とのしばしのお別れです。では、さようなら~ってね。

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