終極の宙
世界を無限に砕く一撃が放たれた。それすら一撃のもとに断つ斬撃があった。幾度となく繰り返される攻防はただ激しさを増してゆき、やがては諸共に未知の領域へと堕ちてゆく。
無限すらも超越した攻防により、虚無の世界にヒビが入る。それは、やがて全てを崩壊させて虚無世界の特異点とも呼べる場所へと俺達は諸共に突入した。
「っ⁉」
「・・・・・・っ、ずいぶんと懐かしい場所に‼」
其処は、白く神々しい。何処までも続く白色の空間だった。白色光に輝く空間だった。
あまりに神々しく、そしてあまりにも圧倒的なまでの力を放つ。そんな空間。
光溢れる、只一つの闇すら持たない完全に無欠の空間だ。その圧倒的なまでの存在密度の場は常人ならば即座に発狂するであろう、まさしく神の次元だった。
そして、それを見た俺はすぐに理解する。ああ、此処は原初の時なのだと。
此処こそ、原初の座標なのだと。
そう、此処こそが世界の原初。創世の場なのだ。虚無という言葉すらありえない、言葉にする事すらももはや不可能な無二の次元なのだろう。この場所こそ、世界の真実そのもの。
この空間には、全ての可能性も現在も過去も未来も。世界の全てが只一つとして存在する。
時間も空間も、全ての可能性時空がこの空間ではたった一つだ。故に、全であり一だ。
無であり、無限だ。
故に、この空間は孤独な空間なのだと。俺は理解した。理解して、即座に身体を横にずらした。
「何を、ぼうっとしている?」
「っ‼」
無限の世界を砕く一撃が、俺のすぐ横をかすめていった。直撃しなかったのは、刹那で俺の危機察知能力が上手く働いたからだ。いや、霊的進化を果たし全ての能力が格段に向上したのが理由だろう。
返す刀で、俺は全てを断ち切る程の斬撃を振るう。しかし、それをアザトースは全く苦にもせずにほんのすこしだけ身体をずらすだけで躱した。俺は、同時に一つ事実を理解する。
この空間、無限の世界を砕く一撃もそれすら断ち切る斬撃も。全く問題なく呑み込んでしまう。
それは即ち、この空間の強度が無限の世界すらも超越して余りある事を意味している。
常人には到底理解しえない、理解の範疇を超えた存在密度と強度の空間だ。
そして、それは即ち一つの事実を表している。それは、つまりはこの空間ならば俺とアザトースが全力で暴れても何の問題も無いという事実だ。そんな空間が存在するのか?存在しても良いのか?
俺には解らなかったが、それでも今は目の前の戦闘に集中すべきだと俺は察した。




