崩壊世界
世界が崩壊した。それは、文字通りの意味だ。天も大地も、星も宇宙も、時間も空間も、何もかもが一切合切崩壊して砕け散った。それは、まさしく世界の崩壊だった。
「なっ、これは・・・・・・」
「何を驚く?これが世界の真実だ・・・」
世界の、真実だと?この、何も無い崩壊した世界がか?俺は、思わず目を見開いて愕然とした。それはつまりだ、この崩壊した世界こそが真の世界の姿だという事だ・・・
「この、崩壊した世界こそが真実の世界だと・・・?そう言うのか、アザトースっ!」
「そうだ。世界とは即ち、私の見る夢に過ぎなかった。私の夢が物質化したのが世界だ。所詮、貴様等人間も私の見る夢に過ぎないだろうに・・・」
「っ‼?」
その言葉に、言い知れぬ悪寒が奔る。
言われて、俺は周囲を確認する。其処には、俺の最も大切な存在が居なかった。俺の最も大切な人がこの世界から消失していたのだ。それに気付いた時、俺は意図も容易く理性を放棄した。
・・・そう、マキが世界から消失していたのだ。
「お・・・おおっ、おおおおおおああああああああああああっっ‼‼‼」
「アザトースたる私が目を覚ました故、世界と共に人間も消滅した。ああ、お前は消滅せんぞ?お前には私の子たるヨグ=ソトースが宿っているからな。世界と人類が消滅してもお前だけは消滅せん」
「おおっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああっっ‼‼‼」
何たる無常か‼何て孤独か‼あんまりではないか‼これでは、あんまりにも無常過ぎる‼
「喜べよ。お前は私の夢の中の存在を超越し、私と同じ領域に到達したんだ」
オメデトウ・・・
ココロカラ、オマエヲイワオウ・・・
「アアアアアザアアトオスウウウウウウウウウッッ‼‼‼」
俺は、アザトースに向かって無謀にも突撃した。突撃して、特攻した。そうせずに居られなかったが故にである。そうせずに居られなかったのだ。もう、俺には何も残ってはいなかった。
そんな俺を、アザトースはつまらない物を見る目で見ていた。心底から落胆した目だ。
「つまらん・・・」
瞬間、僕を無数の触手が絡みついて、捕縛した。それは、柔らかくもありながら鋼鉄の鎖よりも遥かに頑丈で硬い触手だった。無論、それに捕らわれた俺は、身動きが取れなくなる。
アザトースの背後に揺らめく無数の触手。それは、まさに名状しがたい恐怖を与える。しかし、俺はそれを一切無視してアザトースを睨み付けた。睨み付け、不屈を訴えた。
しかし、それもやはりアザトースには通用しない。邪神の王たるアザトースには、人間の心は最初から理解の外なのだから。最初から、そんな物は理解出来ないのだから・・・
俺の心臓を、アザトースの触手が貫いた。俺の存在が、消されていく・・・・・・
消されて・・・亡くなっていく・・・・・・




