邪神の王
少しだけ、時間は遡る・・・
炎上する街の中央、其処に痣火と空亡真、ミズチの三人が居た。立っているのは、痣火一人。真とミズチの二人は地面に這いつくばるように倒れていた。二人共血塗れだ。
ミズチに至っては、既に事切れている。その表情は、無念に歪んでいる・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな二人を、痣火は冷たく乾いた瞳で見下ろしている。その顔に、表情一つ無い。何処までも冷たく乾いた瞳で痣火は見下ろしていた。思わずゾッとするような表情だ。人間に、此処まで冷たく無感情な顔が出来るのだろうか?いや、そもそも人間ではない彼女には人間らしさなど最初から無い。
彼女は、彼女の正体とは・・・
「く・・・くはっ!ついに正体を現したか、邪神の王———アザトース」
「・・・・・・・・・・・・やはり、気付いていたか」
「気付かんとでも思ったか、我らの怨敵」
真は深い憎悪の籠もった瞳で痣火を、否、アザトースを見た。しかし、それでも痣火の無感情な瞳は決して揺らぐ事は無い。何処までも冷たく乾いた視線を向けるのみ。
そんな彼女に、真は憎悪の籠もった瞳で告げた。呪詛の籠もった声で、告げた。
「俺が、俺達が滅びたとしても俺達の意思は滅びない。必ず、お前を滅ぼしてみせる・・・」
「だと良いな・・・」
そう言って、痣火は手に持った太刀を振り下ろした。瞬間、周囲に赤が散った。




