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日常の壊れる最悪の非日常  作者: ネツアッハ=ソフ
激しくなる戦い
17/27

目覚め

「・・・・・・んっ・・・っう・・・」


 目を覚ますと、其処は廃墟(はいきょ)の中だった。廃墟の中は以前よりもボロボロで、しかしそれでも倒壊する事なくその兆候すらもなく建っている。その時点でも異常だが、それよりも・・・


「・・・・・・・・・・・・」


 俺は隣に座っている彼女を見た。彼女、マキは泣きそうな顔で俺を見ながらそっと額を()でた。そのあまりにも痛ましい姿に、俺の胸が痛んだ。自然、俺の手がマキの頬に()びる。マキの瞳が揺れた。


 よく見れば、その瞳からは涙が(あふ)れている。俺の胸が、ずきりと痛む。


「・・・・・・マキ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 マキは答えない。しかし、俺には解る。彼女は今、途方もない後悔(こうかい)の念が渦巻いている。俺が傷付いた事を自身の責任として深く己を()めているんだ。だから・・・


 俺は、マキにそっと話し掛けた。出来る限り、マキを(いた)わるように。優しい口調で。


「・・・別に、俺が敗北し傷を負ったのはマキのせいじゃ無いぞ?これは俺自身の弱さのせいだ」


「・・・でも、・・・・・・」


 マキは何かを言い掛けて、口をつぐむ。そんな彼女に、俺は出来る限り優しく微笑み掛けた。


 ・・・もう、マキを泣かせたくはないから。俺の(ちか)いを、マキに()げる。


「大丈夫、今度は俺も強くなるから。マキをきちんと(まも)れるくらい、強くなるから・・・」


「・・・っ」


「それでも、マキが後悔するなら・・・これからは一緒に強くなっていこう。大丈夫、俺は必ずマキと添い遂げてみせるから。必ず、マキの傍に居続けるから・・・」


「・・・・・・っ、うん。私も、一緒に強くなる。・・・今度は、(ソラ)を守ってみせる」


 そう言って、マキはぎこちなく微笑んだ。うん、やはりぎこちなくともマキには笑って()しい。


 そう思うから・・・


 そうして、俺とマキはそっと口付けを()わした。今度こそ、彼女と共に在り続けると誓って。


          ・・・・・・・・・


 その光景を、部屋の外の物陰(ものかげ)から聞いている二人。痣火と京の二人だ。二人はマキと宙の二人の様子に満足そうに笑みを浮かべていた。


 思う所は当然二人にもある。宙を傷付けた事も、そしてマキを泣かせた事にも、当然怒りはある。


 故に、宙が倒れた後痣火は怒り狂い敵首魁(しゅかい)に肉薄した。その攻撃は余りにも激しく、その余波で廃墟が倒壊しない事があまりにも不自然な程だった。それ程に、激しかった。


 しかし、それでも廃墟は倒壊しなかった。恐らく、何らかの異能(スキル)が関わっているのだろう。


 しかし、痣火は(もく)して語らない。語ろうとしない。


 痣火は考える。恐らく、近い内に再び敵は侵攻(しんこう)してくるだろう。宙達は再び戦う事になるだろう。


 しかし、痣火は同時に考える。(おそ)らく、今度は前のようにはならないだろうと・・・


 そう、確信(かくしん)していた。

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