目覚め
「・・・・・・んっ・・・っう・・・」
目を覚ますと、其処は廃墟の中だった。廃墟の中は以前よりもボロボロで、しかしそれでも倒壊する事なくその兆候すらもなく建っている。その時点でも異常だが、それよりも・・・
「・・・・・・・・・・・・」
俺は隣に座っている彼女を見た。彼女、マキは泣きそうな顔で俺を見ながらそっと額を撫でた。そのあまりにも痛ましい姿に、俺の胸が痛んだ。自然、俺の手がマキの頬に伸びる。マキの瞳が揺れた。
よく見れば、その瞳からは涙が溢れている。俺の胸が、ずきりと痛む。
「・・・・・・マキ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マキは答えない。しかし、俺には解る。彼女は今、途方もない後悔の念が渦巻いている。俺が傷付いた事を自身の責任として深く己を責めているんだ。だから・・・
俺は、マキにそっと話し掛けた。出来る限り、マキを労わるように。優しい口調で。
「・・・別に、俺が敗北し傷を負ったのはマキのせいじゃ無いぞ?これは俺自身の弱さのせいだ」
「・・・でも、・・・・・・」
マキは何かを言い掛けて、口をつぐむ。そんな彼女に、俺は出来る限り優しく微笑み掛けた。
・・・もう、マキを泣かせたくはないから。俺の誓いを、マキに告げる。
「大丈夫、今度は俺も強くなるから。マキをきちんと守れるくらい、強くなるから・・・」
「・・・っ」
「それでも、マキが後悔するなら・・・これからは一緒に強くなっていこう。大丈夫、俺は必ずマキと添い遂げてみせるから。必ず、マキの傍に居続けるから・・・」
「・・・・・・っ、うん。私も、一緒に強くなる。・・・今度は、宙を守ってみせる」
そう言って、マキはぎこちなく微笑んだ。うん、やはりぎこちなくともマキには笑って欲しい。
そう思うから・・・
そうして、俺とマキはそっと口付けを交わした。今度こそ、彼女と共に在り続けると誓って。
・・・・・・・・・
その光景を、部屋の外の物陰から聞いている二人。痣火と京の二人だ。二人はマキと宙の二人の様子に満足そうに笑みを浮かべていた。
思う所は当然二人にもある。宙を傷付けた事も、そしてマキを泣かせた事にも、当然怒りはある。
故に、宙が倒れた後痣火は怒り狂い敵首魁に肉薄した。その攻撃は余りにも激しく、その余波で廃墟が倒壊しない事があまりにも不自然な程だった。それ程に、激しかった。
しかし、それでも廃墟は倒壊しなかった。恐らく、何らかの異能が関わっているのだろう。
しかし、痣火は黙して語らない。語ろうとしない。
痣火は考える。恐らく、近い内に再び敵は侵攻してくるだろう。宙達は再び戦う事になるだろう。
しかし、痣火は同時に考える。恐らく、今度は前のようにはならないだろうと・・・
そう、確信していた。




