永劫回帰の夢世界
夢を見ていた・・・俺は今、夢の中に居た。
俺は炎に包まれた街で、少女と共に戦っている。戦い、戦い、戦って、そして死ぬ。そう、夢の終わりは必ず俺の死で終わる。しかし、今回は違った。今回だけは夢の内容が少しだけ違った。
夢は巻き戻り、そしてまた初めからやり直し。その中で俺は再び彼女と出会い、そして戦いの中で再び敗北して死んでゆく。そして、再び巻き戻る。
巻き戻り、巻き戻り、巻き戻り、巻き戻り、巻き戻り・・・延々と繰り返す俺の夢。いや、これは恐らく夢ではないのだろう。これは、きっと・・・。きっと、俺の・・・
「俺の・・・記憶、か・・・・・・」
だとすれば、この繰り返しは・・・この巻き戻しは。
俺の人生は、世界は巻き戻っている?繰り返されているのか?だとすれば・・・
俺の頭の中に、過る一つの光景。それは、かつて幼少期の体験。
俺は自身の意識の海に深く潜り込む。意識を心の深奥に向ける。すると・・・あった。それは、俺の心の中の最奥に根差していた。心の奥底に根差し、そして息づいていた。
「そうか、これが俺の本質か。これが、俺の異能の正体か・・・」
《そう、私は貴方の本質であり、貴方と共に在る者。人は私をヨグ=ソトースと呼ぶ》
そう、俺の心の奥底に居たそいつは言った。
ヨグ=ソトース。門にして扉。窮極の門。全にして一、一にして全なる者。世界そのもの。
全知全能なる邪神。その同一体こそ、俺の正体だ・・・
ああ、そうか。俺は全てを思い出した。そうだ、俺がまだ幼少の頃の事だ。まだ幼かった俺は、街の近くにある森林公園でこの邪神と出会った。そして、その邪神は何を思ったか俺と同化したんだ。
世界の時間と空間、その全てを司りながら特異点である者。単一でありながら、全てである者。それがこの邪神の本質であり、今や俺の本質だ。
何故、こいつが俺に同化したのかは知らない。けど、それが原因で俺は永遠にループする時間の中に居るんだと思うから。けど、それは考えても詮無い事だろう。
俺がこいつと同化していたからこそ、きっと再び彼女と出会えた。何度、死により間を引き裂かれても俺は彼女と再び出会う事が出来たんだと思う。それだけは、感謝しよう。
《・・・貴方は、私を憎んだりしないのだな》
「しないよ、そのお陰で彼女の傍にあり続ける事が出来たんだから」
《・・・・・・そうか》
そう言うヨグ=ソトースの瞳は、何処か晴れやかな気がした。気のせいかもしれないが。
そうして、永劫回帰の夢は晴れていく。




