憤怒
流石に、俺は困惑していた。痣火の怒りが全く理解出来なかったからだ。京やマキも意味が解らないのか困惑している様子だ。一体、これはどうすれば良いのか?
全く理解出来ない。というより、正直怒りの理由が解らない。
「えっと、あの・・・?」
「答えろ・・・今の話はどういう事だ・・・・・・?」
「え?ええ?」
痣火は俺の胸倉を摑まん勢いで、詰め寄ってくる。しかし、俺はいまいち状況が理解出来ない。というよりも今の痣火が本気で怖い。理解出来ない恐怖が其処にあった。
しかし、マキの居る手前無様な格好をするわけにもいかない。流石にどうすれば良いのか、困惑する俺の前にマキが立つ。どうやら、俺を庇う気らしい。その姿に、思わず目頭が熱くなる。
マキが俺の方をちらりと見て、笑みを浮かべた。その笑みが、とても心強かった。
「マキ・・・其処を退け」
「いいえ、退きません。師匠、少し落ち着いて下さい。それでは怯えさせるだけです」
「今の話が、かなり重要な意味を持つとしてもか・・・?」
「それでもです。宙が怯えているじゃないですか・・・」
マキの言葉に、痣火はじっと俺を睨む。その鋭い視線に、俺はびくっと震える。
・・・何故か、京もびくっと震える。
痣火はそのまま視線をマキに戻す。その鋭い視線に、マキは僅かに震える。しかし、その肩に俺は手を置き抱き締める。マキは僅かに安堵した息を漏らし、強い視線を痣火に返した。
自然、睨み合うマキと痣火。空気が、それだけで重圧を増す。重苦しくて、息苦しい・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その緊迫した空気に、京は怯えているのか僅かに後退した。そのあまりの緊張した空気に、周囲の重力が倍に増したような錯覚さえ覚える。ああ、空気が重たい・・・
やがて、痣火が溜息を一つ吐く。自然、空気の緊張がゆるむ。
「・・・すまんな、少し落ち着きが足りなかった」
「・・・・・・は、はぁっ」
俺は、気の抜けた反応を返した。しかし、まあ・・・怖かったぁ・・・




