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日常の壊れる最悪の非日常  作者: ネツアッハ=ソフ
非日常との出会い
11/27

エピローグ

 廃墟(はいきょ)となった学校の屋上。其処で、俺は憮然(ぶぜん)とした顔で寝転がっていた。結局、俺は一度もマキから一本すら取る事が出来なかった。十本勝負のうち、十回ともマキの勝ちだ。


 ・・・マキが強すぎる。


 俺は更にむすっとした顔で遥か上空を睨む。別に、負けた事が悔しい訳ではない。これは、あくまで剣術指南なのである。それにむきになって、挙句(あげく)の果てに本気を出した。それが、情けないのだ。


 ・・・そんな自分が、悔しくて仕方がない。この意地すらも鬱陶(うっとう)しい。


「・・・・・・ずいぶん、不満そうな顔ね」


「・・・・・・・・・・・・」


 其処に、マキが呆れた顔で来た。マキは俺の横に座ると、苦笑を浮かべて俺の顔を(のぞ)き込む。


 俺は、憮然としたままそっと溜息を吐いた。やはり、俺もまだ子供なのだろう。こんなにもマキに気遣われているのが解る。それが、やはり悔しくもある。


 マキに気遣われている自分が、情けなくて仕方がない。そう考える事自体も、情けない。


「・・・・・・そんなに、むきになった事が()ずかしい?」


「別に・・・・・・」


 ・・・そうやって、また俺は意地を張る。


 そんな俺の意地が、マキにどう(うつ)ったのかマキは苦笑を浮かべた。そっと、俺の頭を撫でる。


「・・・・・・まあ、別に良いんじゃない?意地を張るくらい」


「ん?」


 ・・・それは、一体どういう事だ?


 思わず、俺はマキの顔を凝視(ぎょうし)する。そんな俺に、マキは苦笑を浮かべる。


「私だって、意地を張る事くらいあるし・・・」


「・・・・・・俺は」


 言い掛けてすぐに黙る。何を言えば良いのか解らなかった。此処で、何が最適(さいてき)か解らなかった。


 しかし、マキはそんな俺の考えも見透かしたかのように微笑む。思わず、俺は視線を逸らす。


「私ね・・・、少し前まで復讐(ふくしゅう)の鬼だったの」


「・・・・・・復讐の、鬼」


 復讐の鬼。復讐鬼(ふくしゅうき)・・・


 俺は、初めて出会った時のマキを思い出した。異能者を相手に、鬼気迫る顔で刀を握っていた。その時の彼女はまさしく、復讐の鬼だったのだろう。復讐鬼だったのだろう。


 マキは、俺の頭を撫でながら微笑む。その笑みは、まるであの時のマキとは正反対だ。


 とても、慈愛(じあい)にみちている。深い愛情に満ちている。


「そんな私に、貴方は人並みの愛情を思い出させてくれた。人並みの幸せを思い出させてくれた。それはとても感謝している。感謝しても、しきれないけど・・・」


「・・・・・・・・・・・・それは」


「ありがとう、(そら)。愛してる」


 そう言って、マキは俺の(ほお)にそっとキスを落とした。もう、俺の中から意地は消えていた。


 俺は、僅かに笑みを浮かべて返事した。


「こちらこそ、ありがとう。マキと出会えて俺は(しあわ)せだ」

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