剣術指南、後
「うぅっ・・・・・・」
「ああ、まぁ・・・すまん」
真っ赤な顔のマキに、俺は申し訳なさそうに謝る。先程から、その繰り返しだ。
マキが真っ赤な顔で俯いて唸る。可愛いんだが、申し訳ない気分になってくる。うん、でもやはりマキが可愛い事には変わりない。思わず、俺の頬が緩む。
そんな俺を睨み付けるが、正直そんなマキの顔もかなり可愛いと思う。やべえ、顔がにやける。やはり可愛いは正義だな。俺はこっそり確信した。
マキはそっと溜息を吐いた。
「宙、覚悟は良い?」
「ああ、うん・・・お手柔らかに」
ちなみに、今現在俺は竹刀を構えてマキと向き合っている。場所は、体育館跡だ。
体育館の端には、痣火が俺達を見ている。その目はさっさとやれと言っている。仕方がない、俺は竹刀を正眼に構えて呼吸を整える。そして・・・
「ふっ!!!」
気合一閃———
一息に距離を詰め、竹刀を振るった。決まった、そう確信するが・・・
「甘いっ!!!」
すぱあーーーんっっ!!!!!!
軽快な音が、体育館跡に響き渡る。俺の頭に、鈍い痛みが奔る。頭を竹刀で叩かれた?
・・・え?今、一体何があった?
訳が解らないまま、目の前を見る。其処にはマキが鋭い目付きで此方を見ていた。その構えに、一切の隙はありはしない。何処を打ち込んでも、容易く打ち返されるだろう。
・・・ああ、なるほど。俺は納得した。納得して、理解した。
どうやら、マキの実力を見誤っていたらしい。俺は、今度こそ本気で竹刀を構える。ゆっくりと呼吸を整えて正眼に竹刀を構える。そして、魂の奥底に眠る俺の力を呼び起こす・・・
・・・俺の瞳が、焼き切れそうな程に熱を放出する。今にも、視神経が焼き切れそうだ。
しかし、だからどうした?そんな事、知った事か。身体の奥底から、昂揚する。
気分が高鳴る。
「ふっ!!!」
「っ!!?」
一瞬で、マキの懐に潜り込み竹刀を振るう。それにマキは驚いた表情をするが・・・
しかし、それをマキは最小限の動作で避け、そのまま竹刀を胴に向かって振るう。
躱せない。躱せる筈がない。だが・・・しかし・・・
俺の瞳が、更に熱く発熱する。意識が、白熱する。限界を、大きく超える。人間を、超越する。
「っっ!!!!!!」
「なっ!!?」
躱せないなら、受け止めるだけだっっ!!!
俺はぎりぎりの所でマキの竹刀を受け止める。そして、そのまま竹刀を起点にして流し、払う。恐らく今の動作はかなりの無茶があったのだろう。全身の筋肉が軋みを上げる。
しかし、それでも・・・
俺は、そのまま竹刀を全力で振るう。マキの胴に向けて・・・
しかし。
次の瞬間、軽快な音と共に俺の胴に軽い痛みが奔った。俺の、敗北だった。




