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93 紫炎の支配者

 煌々と燃えるフェニックスの体。

 紫色の灯りによって俺たちのいる岩場は美しく照らされている。

 

 俺たちと『七色の風』。

 双方の間に言葉はなく、誰も動こうとしない。


 俺はロードと呼ばれたリーダーをまっすぐ睨みつけた。

 『魔物図鑑』を右手で持ち、いつでも仲間を呼び出せるように構えている。

 不思議なことに体調はよくなり始めていた。汗はひき、呼吸も収まっている。

 それどころか今までにないほど体が軽く感じるくらいだった。

 

 一方、俺と対面するリーダーと言えばじっと俺を見つめている。

 敵を前に警戒しているーーという雰囲気はない。

 どちらかというと、与えられたパズルを解こうと面白がっている子供のような目をしている。

 俺の腕と、頭上を煌めくフェニックス。

 それぞれへと視線を向け、愉快そうに笑みを浮かべているのだ。


「あの一瞬で完全に腕を再生させるとは。切り落とした腕がいつの間にか消えるいるし面白い現象だ。最上級の回復魔法でも腕の再生なんて出来ない。回復魔法では失ったものを取り戻すことはできないからね。フェニックスの力。素晴らしいよ」


 楽しそうにリーダーが口を開く。

 その後ろでは6人が警戒の目で俺を睨んでいた。

 伝承ではフェニックスはあらゆるものを治し、そして破壊もすると言われている。

 そうでなくともこの岩場に溢れる魔力の強さを感じれば、警戒するのも当然だろう。

 春の高原にでも来たようにリラックスしているリーダーが変わっているのだ。


「どうだよロードさん。悪くない条件だろ? ブランカを素体にドラゴンを復活させる計画よりも、ドラゴンと同格とされるフェニックスの能力の方がよっぽど成功する可能性が高いと思うんだけどな」


 俺の提案にリーダーは微笑みを見せる。 

 ただ、その目が少しだけ鋭さを取り戻しているように俺は思えた。

 『石畳の国』で尋問された時を思い出す。

 あの鋭いプレッシャーを思わせる気配が、目の前のリーダーから少し滲み出ているような気がした。


「確かにフェニックスの能力ならドラゴンを復活させられる可能性は高いだろうね。それどころか黒い森のバランスを治すことすら可能だろう。確かに悪くないよ。悪くないどころか最善手かも。実を言えばフェニックスは俺自身追い求めていたんだよ。現実的じゃないから他のメンバーに提案したことはないけどね。

 うん。悪くない。悪くない提案だよ」


「そうだろ? だったら俺たちと対立するのはやめようぜ。このまま対立すれば、あんたらはフェニックスを敵にすることになる。流石のあんたらでも不死のフェニックスを相手に無事ではいられないだろ?」


「うーん。そうだねぇ」


 腕を組みリーダーは少し考える仕草をしてみせる。


 交渉というよりは脅しに近い俺の言葉。

 『七色の風』のメンバーたちは不安そうにリーダーへと視線を向けている。

 

 大山脈のドラゴンを退けたという伝承のあるフェニックス。

 そんな存在と戦うのは流石の彼らでも御免被(ごめんこうむ)りたいのだろう。


 しかし、そんな仲間からの視線に気付いていないのかリーダーは剣を再び構えてみせたのだ。

 そして恐ろしい速さで剣を振るい、自らに放たれた()()を払い飛ばした。


 ブランカもドリアも、そして他のメンバーたちも突然の事態に目を見開いた。


「ちょ⁉︎ なんのつもりだよ、あんた⁉︎」


 俺は一歩その場から退き、慌てて抗議した。

 リーダーは片手で剣を握りながら俺を睨んでいる。

 先ほどまでの微笑みや無邪気さのようなものは消えていた。


「なんのつもりかだって? いやいや、それは俺のセリフだぜ、ナイトくん」


「はぁ? 何言ってんだ? 頭おかしいのか? 突然抜刀しやがって。皆びっくりしてるだろ」


「ん? いやいや、君が俺を攻撃して来たから驚いているんじゃないか」


「……さっきから思ってたけど、あんた変わり者だな。意味不明だよ。ブランカ達もそう思うだろ?」


 俺は左右にいる仲間へと呼びかける。

 もういい加減リーダーの雰囲気に接するのが苦しくなって来た。

 一度気持ちを整えるためにもブランカたちにも会話へ加わってもらいたかったのだ。


 だが、横を向いて見えたのは俺を見て怪訝そうな表情を浮かべるブランカの顔だった。

 ドリアも同じように俺の顔を見て目を見開いている。


「え? ちょ、なんで2人ともそんな顔しているんだよ?」


「だって、ナイトが突然攻撃するんだもん……びっくりするよ」


 ドリアの発した言葉に俺は一瞬言葉に詰まった。


「…………は? 俺が、攻撃した?」

 

 そして、俺がそう聞き返した時だ。


 俺の周囲に光の塊が出現する。

 100個近い光が漂うその光景に俺が唖然としていると、光の塊は周囲へと勢いよく飛び散ったのだ。

 

 光の玉はブランカ達と『七色の風』へと撃ち込まれた。

 幸い全員が回避してみせたが、それは間違いなく上級魔法『光弾』だ。

 そして、光弾は明らかに俺から錬られた魔力で形成されている。


「え? …………えっ?」


 俺が言葉に詰まっていると、後ろからリーダーが語りかけて来た。


「さっきの話だが、確かにナイト君の提案は魅力的だよ。フェニックスの能力でドラゴンを復活させる。正直なところすぐにでも『うん、いいよ』と言ってあげたいくらいの魅力的な提案さ。でもね」


 剣を右手に握りながらリーダーは俺へと迫る。


「それはナイト君がフェニックスを制御できていればの話だよ」


 リーダーの言葉を聞いた途端、俺の頭へと声が響いた。


 ーー壊セ!


 それは先ほど聞いた謎の声。

 全身が熱くなる。まるで体の奥へ炎が燃え上がっているかのような感覚だ。

 全身へと巡る熱は強力な魔力だと俺はようやく気付いた。


「大山脈のドラゴンに匹敵するフェニックス。宝具を使っているとは言え人間に制御できる存在なのかな?」


 そう言ってリーダーの刃が振るわれる。

 俺はーーいや、俺の体はその凶刃を回避するとふわりと空中へと浮かび上がった。

 背中には強力な熱を感じる。振り返ると俺の背中には紫炎の翼が形成されていた。


 俺の左腕が前に突き出された。

 それと共に、強力な炎の鞭が生まれ地上にいる『七色の風』たちへと襲いかかる。

 全身をめぐる炎の力。

 それらが俺の力を高めていた。

 『七色の風』は俺の攻撃によって分断され、魔法使いたちが火傷を負い悲鳴をあげた。


「何だよこれ!」

 

 俺は魔力の流れを操作しようとするが全く制御できない。

 それどころか肉体の操作もできないのだ。

 首から下の制御がまるで効かない。

 俺の体は勝手に動き、攻撃を繰り出しているのだ。


 ーー壊セ! 壊セ! 壊セ! 壊セ!


 頭に響く声が大きくなって来た。


「魔法。人間ノ技術。スバラシイ!」


 口も制御が効かなくなって来た。意に反して発せられた自分の声に寒気がする。

 俺の体へ別の何かが侵入して来たような感覚。

 

「うわあああああっ!」


 気づけば俺は叫んでいた。

 自分が蝕まれている。

 そのことを実感し、恐怖に染められ叫ばずにはいられなかった。


「「ナイト!」」


 ブランカとドリアの声が聞こえるが、もう俺はそれに答えることができない。

 口の制御も奪われ始めた。


 俺の周囲へと再び光弾が形成される。

 地上へと放たれた光弾は地面をえぐり、爆音を鳴らしていた。

 俺の魔力でこんな威力は出せなかったはずだ。

 光弾の色が紫色になっているのを見て、俺は自分に流れる強力な魔力ーーその主を理解した。


「フェニックスに逆支配されているようだね」


 リーダーの言葉が耳に届く。

 

 俺は頭上を見上げた。

 

 美しく燃えるフェニックスと目があう。

 甲高く一鳴きしたフェニックス。

 その目はどことなく薄ら笑っているように俺は感じたのだった。


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