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42 こ機嫌取りと今後の夢

なんとか頑張って更新しています。

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 魔法陣使いを名乗る女に塔を追い出された俺たちは、


「機嫌直してくれよ、ブランカ」


「ふーんだ。あんな下品な格好した女にホイホイついて行くから恥をかくんだよ。そんなご主人様なんて私は知らないもんね〜」


「分かった。じゃあ、とびきり上等な牛肉を食べに行こう! それで許してくれ!」


「そ、その程度で許すわけ」


「わんわん。尻尾振ってるぞ」


「…………」「…………」「…………」


 いろいろあって高級料理店を訪れていた。


「んまぁーい! 焼いた肉って最高! 200年間この味を知らなかったなんて損してたんだよぉー」


 歓喜の表情でブランカが肉を頬張る。

 細身の少女が3キロ近い肉を食べ尽くす光景に、店員たちは魔物にでも遭遇したかのように呆けていた。

 昼休憩に訪れていた他の客たちも唖然としている。


「まぁ、魔物なんだけどな」


 独り言ちながら俺は横に座るブランカを眺めた。不機嫌そうな様子はもうない。単純な奴だ。

 

 食事を済ました俺たちは馬車に乗って再び国内観光を楽しんだ。

 美術館。魔法道具作り職人の仕事場。闘技場。崩落した王子の別荘などなど。


 暗くなり宿へ戻った俺たちは、軽めの夕飯を済ませすぐに就寝することにした。

 ブランカには『魔物図鑑』の中で眠ってもらっている。


「今夜はあたいがナイトと寝る番だな」


 ベッドの上で仁王立ちしているのは緑色のネグリジェを着たドリア。

 俺も寝巻きに着替え、布団へと入るとドリアも同じベッドへと潜り込んできた。


「おい。もう1つベッドあるんだからそっちで寝たらどうだ?」


 俺の提案に対しドリアは、


「わんわんとは同じベッドで寝てるくせに」


「なんで知っているんだよ。あれはブランカが勝手に入ってきたんだぜ?」


「あたいも一緒が良い」


 と応じることはなく、結局俺はこの無邪気な妖精と同じベッドで寝ることになった。


「わんわんは図鑑の中か。これで図鑑の魔力は回復するんだよね?」


 ドリアが俺へと密着しながら問いかけてきた。植物を操る妖精にも関わらずドリアは人肌と同じくらいに暖かい。意外な温もりに驚きつつ、俺はそうだよと答えた。


「ヴェノマム戦の時みたく魔力切れなんてもう御免だからな。魔石を数個吸収したから魔力切れは起こしにくいとは思う。けど念には念をだ。夜間にブランカかドリアが図鑑に入っていればその日の魔力分は十分に回復するだろう。これも戦術さ。というか2人とも図鑑で寝たほうが快適だろうに、なんで外で寝たがるんだよ?」


「ん〜、ナイトの護衛のためかな? それに人間の寝る方法も面白いし」


 そんなやり取りを交わし、俺たちは眠りについた。


 



 翌朝。

 朝食を済ませた俺たちは『風車の国』の大通りを歩いていた。

 さすがにもうお祭り気分は抜けたらしく、通りを歩く人々は忙しそうに駆け回っている。

 俺たちの姿を見ても軽く挨拶を済ませるくらいになったので、随分と気が楽だ。


 俺がやってきたのは王宮の横に建てられた大きな平たい建物の前。

 正面玄関には『準備中』の看板がぶら下がっている。書かれている営業時間を確認すると、


「開店時間までちょっとあるな。喫茶店で時間を潰そう」


 俺は魔物2人を連れて喫茶店へと入店したのだった。


「うー、あのお店に何か用なの?」


 俺の前に運ばれたコーヒーへと怪訝そうな視線を向けながらブランカが訪ねてきた。

 どうやらコーヒーは初めてらしく、漂う香りにブランカは顔をしかめている。

 ちなみにブランカの前にはホットミルクが、ドリアの前には水の入ったグラスが3つ並べられていた。


「まぁな。そろそろ今後のことを本格的に考えないといけないだろ? あの店にはそのために必要な道具が売っているんだよ」


「今後のことって? もしかしてこの国に住むの?」


 ブランカの疑問に対して俺は首を横に降り否定した。


「前にも言ったけど、『魔物図鑑』を持っている俺にとって人里は能力を発揮しにくいんだよな。ブランカとドリアみたいに人型の魔物ならまだしも、他の魔物を外に出したら騒ぎになる。基本的に魔物に対して人は恐れを抱くからさ。下手をすれば排除されるだろう。

 それに魔物を捕まえてこそ、この図鑑はパワーアップするんだ。人里に住んでしまえば、魔物のいる場所へ向かうのも難しくなる。だから国に住むという選択肢は取らない」


 コーヒーをすする俺を見て、ブランカも自分の前に置かれたホットミルクへと口をつけた。

 

「だからと言って魔物の住む森に住むなんてこともする気は無い。俺は人間だからな。食い物も着るものも必要だ。それを得るためにも人との繋がりは保たないといけない」


「うー。面倒ね、人間って」


「面倒なんだよな、人間って。それで思ったのだけど俺は『行商人』になろうと思うんだ」


「「ぎょーしょーにん?」」


 ブランカもドリアも首を傾げた。初めて聞く言葉だったらしい。


「ほら。東岸地方で商人を助けただろ? あの人たちみたいに国から国へと商品を運びながら生計を立てる仕事のことだ。これなら魔物の住む場所を巡りながら、人間との関わりも保てる。簡単じゃ無いけど、俺たちには合っている生活だと思うんだよ」


 それに『七色の風』が追いかけて来ることを考えると、1箇所に定住するのは危険な気がする。

 生計と逃亡。

 この2つを(まかな)える行商人という仕事は俺にはとても魅力的に思えた。


「というわけであの店には『馬車』を買う用事で来たんだよ。屋根付きで寝泊まりができるタイプの良いやつをな。行商生活で西岸地方を生きてやろうぜ」






「高過ぎる……」


 大通りをとぼとぼと歩きながら俺はため息をついている。

 馬車を売っている店を訪れた俺だったが、早速『値段』という現実に打ちのめされることになったのだ。


「新国王からもらった金だけじゃ買えない。あとは魔石を売るしかないけど」


 俺は鞄から巾着を取り出した。その中には光り輝く魔石が1個だけ入っている。

 金と一緒にもらった魔石のほとんどは昨日のうちに『魔物図鑑』に吸収させてしまったのだ。


「魔石とはいえ流石にこの1個だけじゃ馬車を買える金額にはならないよな。あぁ、しまったなぁ」

 

 後悔に頭を抱える俺は魔法道具の店に向かっているところだった。

 魔石を買い取ってくれる場所の1つだ。


「元気出せよナイト! あたいがそばにいるぞ!」


 ドリアが俺の背中をぽんぽんと叩いた。


「そうだよ。元気出して。私も背中叩いてあげようか?」


「それは勘弁してくれ!」


 ブランカの怪力で叩かれたら背骨が折れそうだ。

 元気付けようとしてくれるのは有難いが、俺はブランカの申し出を断った。


「行商人は良いアイディアだと思ったんだけどなぁ」


「うー。人間って大変ね」


「そもそもあたい達って何を売るの?」


 俺たちがそんな会話をしていると、


「あらぁ〜また会ったわね〜」


 目の前に現れた1人の女性。


「あっ、昨日の下品な女!」


 ブランカが睨む先にいたのは昨日出会った魔法陣使いの女だ。

 昨日と似たような目のやり場に困る服装に身を包んだ女は、


「ご機嫌よう。何だか辛気臭い顔しているわね、ボウヤ」


「欲しいものが買えなかったもので。やっぱり人の世はお金ですよね」


「あらあら、それは残念ね。だったら私の助手になる?」


 突然の提案に俺も魔物2人も顔を見合わせ首を傾げた。


「助手ってどういうことです?」


「言葉通りの意味よ。実は君のことを探していたの。昨日君らを追い払った後に新国王のところに行って来てね。これまで通りに塔を使えることと、魔石の取引は続けられことが確定したわ。でもお得意様だった王子や貴族連中は裁判にかけられるから商売できないのよね。他の取引相手を探そうと思うのだけど、他にもやることがあってはっきり言って人手不足。それでね」


 女は俺へと指差した。


「新国王から君のことを色々と聞いたわ。そこのお嬢ちゃんたちの事もね。考えてみると君は中々の逸材っぽい感じじゃない? 善は急げと思ってこうして直接勧誘に来たってわけ」


「それは、ご苦労様です。でも良いんですか? 俺なんかで?」


「ええ。審美眼には自信があるの。それに」


 女が持っていた杖で地面をコツンと突いた。

 それと同時にブランカとドリアの足元に魔法陣が浮かび上がる。


「君がダメでもそこの2匹は貰うから」

 

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