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プロローグ

 「これで終わりだ、黒眼(こくがん)の魔王!」

 

 黒眼の魔王と呼ばれた老人の胸に、勇者バシラの聖剣が突き刺さる。

 魔王の衣は所々が破け、突き刺さった聖剣もそこら中が刃こぼれしており、根元には決して小さくはないヒビが入っている。ボロボロになったお互いの装備は戦いの激しさを物語っていた。。

 

「ぐああッ。離れよぉッ!」

 

 魔王はバシラを突き飛ばすと、胸に刺さったままの聖剣の刃を掴み、そのまま砕いてしまう。

 しかし魔王も力尽きる寸前であり、その体は少しずつ崩れ始めていた。

 魔王は満身創痍のバシラと、その隣で回復呪文を唱えている魔法使い、クアエを睨むと声を張り上げた。


「素晴らしい! 人間の身でありながらこの私をここまで追い詰めるとは、大したものだ。だが、私は死なん。この体は滅びようとも、私の魂は新たなる体に宿り、偉大なる黒眼は蘇るであろう!」


 魔王は大仰に両腕を挙げると、渾身の魔力を込めて転生呪文を唱え始める。

 転生呪文。対象の魂を魔力に変換させ、別の肉体に移すという禁呪の一つであり、『黒眼の魔王』が最も得意とする呪文である。

 一介の魔族に過ぎなかった魔王はこの禁呪を使い、何度も瀕死の目に逢おうとより強靭な体へ乗り換えていき魔王へと上り詰めていったのだ。

 

 バシラは急いで立ち上がろうとするが、魔王との戦いで酷使された体は既に限界だったのか、脚に力が入らないようでもたついてしまう。

 バシラを癒しきれなかった事から、クアエの魔力も底をついたと魔王はにらんだ。魔力のない魔法使いなど恐るに足りない。

 

 必死に藻掻き騒ぐ勇者(バシラ)に目を戻す頃には、魔王は呪文を唱え終えて魔法を完成させつつあった。

 後は頭上に輝く魔力の塊を隠しておいた代替の体へ移して、無力な勇者達を殺すだけ。

 魔王は自分も気づかないうちに笑みを浮かべる。

 

 だがその時、その心臓に痛みが走った。

 

 魔王は驚きに満ちた黒眼を痛みの元へ向ける。なんと、そこには勇者の横にいたはずの魔法使い(クアエ)がナイフを突き立てていた。

 勇者が藻掻いていたのは、魔王の気を逸らすための演技だったのだ。

 

「今度こそくたばりなさい、魔王!」

 

 クアエはしっかりと握りこんだミスリル製のナイフにありったけの力を流し込む。

 すると、魔力の塊は更に強く輝きだし、終いに目が潰れかねない程の閃光を放って消えてしまった。

 後に残ったのはバシラとクアエの二人だけで、魔王が立っていた場所にはボロ布のようになってしまった魔王の衣とミスリルのナイフが転がっているだけだった。

 

 二人は王国に魔王討伐の報告をすると、権力争いに巻きこれる前に王達の前から姿を消した。

 そして田舎に移り住んだ彼らの間に、一人の赤ん坊が産まれた。

 しかし、喜びに浮かれた彼らは気付かなかった。

 赤ん坊がうっすらと開けた目の色が黒から青に変わったことに。

 

 

 物語はその10年後から始まる。



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