第8章 殿下の過去
第8章 殿下の過去
あの後、私は殿下のすすめでフェン=リルに王太子妃宮に送ってもらい、ついでに玲と晴が帰ってくるまで私のことを警護してくれるらしい。
「リル。ありがとう。でも、仕事は大丈夫なの?」
「ああ、あいつがナディアが俺に言ったんだ。大丈夫だ。それに今日、俺に頼まれた分はもう済ませてある。」
「そっか」
「で、何を飲む。紅茶か?ジュースか?コーヒーか?それとも…」
「アイスティーでお願いします」
「了解。茶葉は何がお気に入りだ?」
「お任せします」
「了解。じゃあ、俺がいつも向こうで入れてるやつでいいか?いや、いいでしょうか?」
「フフッ。是非、それをお願いします」
「畏まりました」
数分後…
リルがティーカップとポットを持って来た。
「姫さん。お待たせ」
「いえ」
「どうぞ」
「ありがとう」
一口紅茶を飲んだ。
最初に口に広がるのはストレートティーのような苦味。後から来るのはミルクティーのような少し甘い味。
「凄い」
私は思わずその一言が口から出た。
「それは良かった」
「これは?」
「ああ、このアイスティーは、『ナディアプレミアム』と呼ばれてる」
「『ナディアプレミアム』?」
「ああ、あいつのお気に入りなんだ」
「なるほど」
「どうした?いきなりニコニコして」
「殿下のお好きな味だということがなんとなくわかる気がして」
「そうか」
「ねえ、リル。」
「ん?」
「昔のナディア様の話が聞きたい」
「え?」
「教えて」
私はにっこりと笑った。
「わかった」
「本当に?」
「ああ」
「ヤッター!」
「ナディアは天才だったよ。もちろん今もだが…」
それからリルはナディア様のことを私に沢山教えてくれた。
子供の頃に2人で国内でその頃に流行っていた病気に効く薬を作って病人を助けるために猛勉強して大学の薬学部に入ってそこで2人で薬を開発したこと。
大学の法学部時代に2人で教授たちには内緒で国の憲法の草案を考えていたこと。そして、今の憲法が2人で考えた憲法であること。
大学を卒業して、ナディア様の父上。今の国王に許可をもらい軍に身分を伏せて偽名で入隊し、訓練に参加していた時も2人で上官よりも完璧に全ての訓練をこなしたらしい。もちろんナディア様の近衛も偽名を使ってナディア様やリルと一緒に入隊し、訓練に参加したらしい。
その後、立太子をするときに除隊したらしい。
この話は、もっと詳しく聞いた。
実は立太子の儀式の前日に偽名で訓練に参加していた隊にナディア様とリル、ナディア様の近衛と真実を話しに行ったらしい。
その時の服装はもうすでに王太子としての服だったらしい。
その隊の隊長は驚いたらしいけれど、王太子殿下と訓練できて良かったとおっしゃったらしい。
ナディア様はそこでこう言ったらしい。
「もしかしたら数年後、私が貴方達の上に立って指揮をとる日が来るかもしれない。その時は私も貴方達と戦場に立ちます。それに、私が指揮をとった時は必ず負けずに戦を終わらせます。
これを約束します。」
そう言ったらしい。
そして、リルは最近の殿下の話もしてくれた。
最近の殿下は私のお菓子を待っているらしい。
あと、私に午前中会えないとシ機嫌が悪いらしい。
そうこうしている間に玲と晴が帰って来た。
「リル。また、聞かせてね」
「ええ。では、失礼します。」
そう言って、リルは帰って行った。