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謎の邂逅

「……あー、変な事言いました?」

「いや、大丈夫だ……。あぁ、問題ない。了解した」


 絶対大丈夫じゃないと思う反応なのだが、まぁスルーだ。出来るといっている訳だし。

 しかし、このままだと気まずいので話題を変えることにする。


「ぉぅ……それじゃ、戦争のことについて聞きたいんですけど」

「ふむ。答えられる範囲なら……というより、お前の場合は概要から教えた方がいいか」

「助かります……」


 そろそろ私の常識のなさを分かってくれたらしい。彼はコホンと咳払いをして、戦争について語り始めた。


「戦争ってのは、7年前に魔王が宣戦布告をして始まった、人魔戦争のことだ」

「……魔王?」


 一気にRPG成分が増し始めた。いや、元から精霊だ魔術だでファンタジー感溢れていたのだが。


「魔王ってのはまぁ、簡単に言えば魔族を率いているリーダーだ。分かるか?」

「魔族……ってのは、まぁ人類の敵っぽそうですよね。で、そのリーダーが魔王と」

「あぁ、そんな認識でいい。それで、10年ほど前に新しい魔王が顕現したのだが、これがとても好戦的な性格でな。瞬く間に魔族を従えて、7年前に戦争を起こしたんだ」


 そういう事らしい。人間側の不憫さよ。


「成る程……因みに、今の戦況は?」

「今は人間側が劣勢。俺たちは体制を立て直すための援軍だそうだ」

「援軍というには数が少ない様な気も……」

「それだけ劣勢なのだ。国も割ける人員がないのだろう」

「……でもそれ、援軍送る意味無くないですか? 少数じゃ戦力にならないでしょう?」

「少数精鋭と言う奴だ。皆かなりの訓練を積んでいるので、戦力にはなるだろう」


 兵法は多で小を押しつぶすだった筈だが……この人たち、捨て駒なのだろうか。可哀想に。


「まぁいいでしょう。私はどちらにせよ関係ありませんしね」

「今哀れまれたような気がするのだが」

「そんなことありません。期待してますよ」

「……」


 にっこり。


「……はぁ、まあいい」


 よし、誤魔化せた。


「それよか、俺はお前の方が気になるのだが……常識に疎いという割には、ジーマ語を知っているのはどうしてだ?」

「ジーマ語?」

「……まさか、知らないのか?」

「常識に疎くて」


 いや、眉間を抑えられても。

 というか、私の使っている言語は日本語の筈だが……これ、能力で翻訳されているのだろうか?


「……あー、アネスさんって、これ以外の言語喋れたりします?」

「ん……あぁ、魔術言語なら」

「ちょっと喋ってみてください」

「ふむ。そうだな……





 結婚してくれ」




 …………。


 ………………は?


「今、何て……」

「ふむ、分からなかったか? 光属性の魔術言語なのだが」

「い、いえ……一応、分かったのですが……その……」

「?」


 私がぽかんとする前で、アネスは何事も無かったような顔をしている。


「……いえ、この話は止しましょう」

「お、おう」


 聞き間違いであると、信じたい。無精ひげの生えた中年おやじに告白されるとか……あぁ、トラウマメモリーががが。


「ちょっと、外に出てきます」

「ん、あぁ。余り遠出はするなよ」

「分かってます」


 そうして、ある種逃げた様にテントを離れ、少し離れたところまでやって来たのだが――





「だぁぁぁぁぁぁもう! なにあれ!!」


 いやいや、冗談じゃない。中年オヤジにコクられた如きで反応してしまってどうするのだ。

 前世で散々告白されただろう落ち着け落ち着くんだ今回も冷静に断ればいいんだでも平然とした顔していたし若しかしたら私の気のせい何だろうその線が濃いというかなんでであったその日に告白されなければいけないのだいや確かに私の美貌は目を引くものがあるし多少髪や目が変わったってその有り余る美しさは一切なくならないのだがだからっていきなりそんな積極的な事はちょっと困るというか異世界ハーレムの相手が中年オヤジというのはでもあのワイルド系な容姿は意外と格好いいし顔立ちも整っていない訳じゃないからありっちゃあ在りなのかまてまて何を考えているんだそんなはずがない私のタイプはあくまで一つ二つ上の読モのような清純派イケメンなのだからあんなワイルドおやじ――――――――





「いや、落ち着けよ私」


 こんなことで気を乱す意味が分からない。頭がどうかしてしまったのだろうか。


「……はぁ。転生の影響かなぁ」





「何? 君、転生してきたの?」

「え」



 突然の声に振り替えると、そこには一人の少女がいた。

 肩にかからないくらいの群青色の髪に、同色の大きな瞳。

 特徴的なノースリープの水兵服から見える白い肌は、まるで少女の純白さを体現している様だった。



 …………。



「……おーい、お姉さん?」

「ハッ」


 いかん。思わず見とれていた。


「あ、いやえと、貴方は?」

「ん? 私はエフリルだよ。君は?」

「あ、ウヌムルと言います」

「そかそか、ウヌムルちゃんね――で、転生してきたの?」

「えっ」


 えっ


「いや、だから転生だよ転生。さっき自分で言ってたでしょ?」

「えぇ、いや、あの……」

「むー、聞いているんだからちゃんと答えてよ」


 いや


「何? 私と話す価値ないの? ちゃんと名前も教えたじゃん」

「あの、そういうのじゃなくて」

「それともあれ? 私のこと気に入らない? 別に君に何かした覚えはないんだけどな?」

「いや、違くて」

「確かにね? 自分より可愛い相手が出てきちゃったら嫉妬くらいしても仕方ないけど、それで会話しないってのは」

「私の方が可愛いし美しいです」

「あ、うん」


 よし、正論でねじ伏せられたようだ。

 が、この展開は結構不味いだろう。こんな突然現れた見ず知らずの少女に転生の事がバレる訳にはいかない。どうやって乗り切るか……。


「……あー、えっと、話はします。しますから……先に質問させてください」

「む……いいよ。私も優しいから」


 ……対抗されてる?


「えっと、先ず、貴方みたいな少女が何でこんなところに?」

「その質問そのまま君に返したいところなんだけど……私はね、ちょっと人を探しているんだ」

「こんなところまで?」

「こんなところまで」


 本当だろうか……疑わしい。


「……探し人は、見つかりましたか?」

「あぁ。今さっき見つかったよ」

「そうですか。良かったですね」

「あー、まぁ、そだね」

「……?」


 曖昧な反応をされても困ってしまうのだが……。



「で、他に質問は?」

「え、あぁ――私、戻ってもいいですか?」

「それ質問じゃないよね。逃げようとしてるよね」

「身の危険を感じてしまって」

「私の方が君より非力だと思うんだけど?」

「人は見た目で判断しちゃいけないって親に言われてるんで」





「それって、君の前世での親?」





 今度ははっきりと、誤魔化しようのない爆弾を投げた少女は、不敵な笑みを浮かべていた。


 少女の純白さを体現しているとかいったな。あれは嘘だ。

 この少女――――中身は完全な真っ黒である。


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