おくすり
病院で軽い診察を受け、薬局で薬の処方を受ける。
薬剤師さんに安価な後発医薬品への切り替えをすすめられ、言われるがままに従った。
その場でしばらく待つと、カウンターに薬が積み上げられる。
「『化膿止め』と『解熱鎮痛剤』が六ヶ月分です。朝・昼・晩、毎食後に一錠ずつお飲みください」
薬剤師さんは薬の山をビニール袋へつめなおし、
「副作用として、服用後しばらくは人間が動物に見えますので外出する際は気をつけてくださいね」
ボクへと差し出した。
袋を受け取り、ボクはその場を後にした。
その日の晩、ご飯を食べたあとに早速薬を飲んだ。
水が少なかったせいなのか、五分もたたずに妙な吐き気と胃の痛みに襲われる。
鋭い痛み、内側で何かが爪を立てているかのようだ。
胃袋からクチをめがけて這い出ようとしている。
それにくわえて強烈な眠気も襲ってきた。
ぐわんぐわんと揺れる視界のなかをふらつきながら、どうにかベットにたどり着くと、倒れこみ、気絶するように意識を失った。
早朝、目を覚ますとカラダが石化していた。
胸より上を残して、全身が大理石になっているのだ。
手足の末端は完全に石になっているが、中心に近い腕や太ももや胴体やは内部にわずかだが血の通う感覚があった。
首を曲げてカラダを見渡し、必死に動かそうとする。
カラダは動くそぶりすら見せない、それどころか首もかたくなってきている。
無駄な悪戦苦闘していると、家の電話が鳴りひびく。
もちろん電話に出ることなどできず、ただそちらに視線を向けることしか出来ない。
数コール後に留守番電話に切り替わる。
「……という発信音の後に――」
機会音声の定型句が流れ、野太い男の声が聞こえてきた。
ボクの診察をした医師の声だ。
「お加減いかがですか?じつはですねぇ……」
薬剤師の調剤ミスで似た名前のちがう薬を出してしまった、と医師は言う。
「もし飲んでしま――」
ピー、と音を立て電話が切れた。留守番電話の時間制限に引っかかったようだ。
電話が鳴り、再び留守番電話に切り替わる。
「えっと、どこまで話しましたっけ?」
そう言って、もう一度初めから話し始めた。
こうしているあいだにも、クチ元まで石化し始めていた。
「もし飲んだら、まで話したんでしたね」
さきほどよりも早口で話していたおかげで話が進んだ。
「石化したように見えますけど、それはカラなんです」
――殻?
残りわずかな生身の部分で考える。
「完全に石化すると『サナギ』のように中身が――」
ピー、と電話が切れる。




