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何者でもないうちに

作者: 月白 深夜

何者でもないうちに

道路脇の溝に片足を突っ込んで

何者にもならなければいいのに

ここを終着点にして


ここに名前ごと脱ぎ捨てれば

先細りの道に置いてきたすべてを取り戻せるか

名前を放ったこの手で

涙で錆びたがらくたを拾って歩けるか


なくす度にひとつ進んだ

進む度にひとつを得た

鮮やかな桜の下のスーツより

褪せたセピアの写真がこの手に欲しい

捨てるには後ろを信じきれずに

僕は僕でありすぎた


何者にもなりたくない

そして僕は誰かになる

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