表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
比留川病院殺人事件  作者: 山本正純
第一章 遭逢
8/30

008

 平成二十五年六月八日。午前九時。

 比留川病院の駐車場に一台の覆面パトカーが止まる。その自動車から降りたのは二人の男女。

 黒く染まった短い髪。眉毛に髪がかからない程度まで伸ばされた前髪が下され、襟足が長い。足の長いスマートな男。三浦良夫巡査部長。

 腰の高さまで伸びた長い黒髪に前髪をピンク色のピンで止めた女。須藤涼風警部。


 遺体発見現場となった比留川病院のゴミ捨て場に向かう二人の前を一台のトラックが駆け抜けた。二人は道に端で立ち止まりトラックが走り去るのを待つ。そのトラックの荷台には『リサイクルクリアー小林』と書き込まれていた。

 トラックが通り過ぎた後二人が現場に顔を出す。現場には既に数人の刑事たちが集まっていた。須藤涼風は現場の前に集まっている刑事に聞く。

「現場の状況は」

 須藤涼風の声を聞き、一人の刑事が手帳を開く。

「死亡したのは矢部雄一さん。四十歳。職業は探偵で大分市内にある矢部探偵事務所の所長をしています。遺体の第一発見者はゴミ捨てにやってきた介護士です。現在遺体の第一発見者は病院内の会議室で待っています」

 三浦は刑事の話を聞きながら、遺体発見現場を観察する。矢部の遺体は大量に置かれた青色のゴミ袋に縋っている。遺体の心臓には凶器が刺さっている。

 遺体発見現場となったゴミ捨て場の中で鑑識の制服を着た肩まで伸びた長髪をピンク色のシュシュでポニーテールの髪型にした女が遺留品を採取している。垂れ目が特徴的な女の名前は吉永マミ。

 三浦は遺体発見現場で指紋を採取している吉永マミに声をかける。

「殺害方法は刺殺か」

「そうだね。殺害方法は刺殺。凶器はこの病院で使用されている手術用のメス。現場に開け付けたドクターによれば、凶器は比留川病院特注品のメス。だから犯人は病院関係者だろうね。被害者の所持品に携帯電話がありません。犯人が持ち去った可能性もある。犯人が遺体発見現場に置かれている大量のゴミ袋の中に隠した可能性もあるけどね。死亡推定時刻は昨晩午後九時から午後十時までの一時間。そして殺害現場は……」

「この現場から少し離れたアスファルトの上でしょう」

 須藤涼風が吉永マミより早く推理を述べる。涼風の推理を聞き、吉永マミが拍手する。

「正解。その近くに飛沫血痕が付着していたからね。まだ被害者の物だとは断定できないけど、被害者はこの現場から五十メートル離れた位置で犯人によって被害者の心臓をメスで刺された。犯人は被害者の遺体をゴミ捨て場に遺棄して逃走。殺害手順はこんなところかな。因みにこの辺りには防犯カメラがないから犯行の瞬間は分からない」

 吉永マミの推理に須藤たちは納得した。須藤涼風は遺体発見現場を観察する。遺体と共にトリカブトの花束が捨てられていたことに彼女は気が付く。

「遺体の近くにトリカブトの花束が落ちていますね。犯人からのメッセージかもしれませんよ」

 須藤涼風の言葉を聞き吉永マミは感心する。

「須藤警部も気が付いたか。事件とは関係ないと多数の刑事たちは考えているだろうけど、おかしいよね。ゴミ捨て場にゴミ袋に入れられていない花が捨てられているのは。こっちは現場に残されたゴミ袋の中に犯人に繋がる遺留品が混ざっていないのかを探してみるよ」

 現場の把握を終えた須藤涼風は現場に集まった刑事たちに指示を与える。

「一班は被害者周辺の人間関係について聞き込み。二班は比留川病院近辺に住む住民たちに聞き込み。三班は私と共に比留川病院内で聞き込みを行います。それでは解散」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ