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比留川病院殺人事件  作者: 山本正純
第三章 証拠がなければ完全犯罪
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 午後八時。大分県警本部で日野公子の取り調べが行われようとしていた。だが取調室には須藤涼風の姿がない。それどころか日野公子の身柄を大分県警本部に移送してから彼女の姿を三浦良夫は見ていない。

 何かがおかしいと思った三浦良夫は大分県警本部内で須藤涼風の姿を探す。すると県警本部の廊下で須藤涼風の部下の刑事に三浦良夫が遭遇する。

「須藤警部を知らないか。取り調べを行おうとしているのだが姿が見えない」

「聞いていないのか。お嬢ちゃんなら取り調べを俺たちに任せて早急に帰ったよ。何でもどうしても外せない用事ができたとかで。どうせ幼馴染にデートでも申し込まれたんじゃないか。そういえば吉永マミも帰ったよ」

 須藤涼風を茶化した刑事の推理は的外れであることは大分県警上層部の人間しか知らない。


 その頃大分市内にあるマンションの一室を吉永マミが訪問した。

 彼女はインターフォンを鳴らすことなく、部屋に侵入する。マンションの中は電燈が付いておらず暗い。おまけに遮光カーテンが窓を覆っている。

 丸い机の上には蝋燭と田中ナズナが追い求めていた報告書が置かれていた。

 吉永マミは暗い部屋でノートパソコンを操作している男にいきなり抱き着く。

「やっぱりあなたが矢部雄一の探偵事務所から例の報告書を盗んだんだね」

 吉永マミが聞くと黒い影が背後を振り返ることなく淡々と答えた。

「そうですよ。本当はスマートな方法を考えたのですが、彼が殺されたことで計画を変更しました。あの報告書が見つかってしまっては身の破滅でしょう」

「だから先手を打って報告書を盗んだということか。こっちはハラハラしたよ。あの報告書が公安に渡ってしまったら、田中ナズナが殺されてしまう。あなたに盗まれたと知ったら安心した」


 吉永マミは謎の人物から離れて台所に向かう。冷蔵庫に仕舞ってあるミネラルウオーターのペットボトルを開ける。

 その間黒い影はインターネットサイトを閲覧して頬を緩ませる。それを見た吉永マミは水を一口飲み、黒い影の右肩を掴む。

「ところで何を見ているのかな」

「何だっていいだろう。またマミは勝手に冷蔵庫からミネラルウオーターを取り出して飲んでいる。それを何とかしてほしいですね」

「別にいいよね。これは私へのプレゼントでしょう。ミネラルウオーターが好きなのが分かっているから備蓄している」

 吉永マミの推理に黒い影は赤面する。

「それくらいやらないと君を振り向かせることはできない」

「だから何のサイトを見ているの」

「しつこいから教えてあげますよ。アカトリ事件。あの事件の関係者が抜群の推理力を身に着けて大分県警の捜査に協力しているという噂を聞いて調べているところです。厄介ですよ。あの真実が明らかになれば、こんな報告書なんてなくても自滅する。だからしばらく警戒する必要があります」

 黒い影はポケットから有安虎太郎の写真を取り出し、それを握りつぶした。

 


to be continued.

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