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比留川病院殺人事件  作者: 山本正純
第二章 密室のカルテ
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021

 彼女は三人に懐中電灯を手渡す。そして吉彼女は元気よく右手を挙げながら隠し通路に向かい一歩を踏み出す。その後を有安たちが付いていった。有安は三浦に耳打ちする。

「あの鑑識課の刑事はテンションが高過ぎないか」

「吉永マミ巡査部長は結構頭がキレる鑑識課の刑事だが現場に来るとテンションが通常の三倍になる。おまけにRPGが大好きなゲーマーでセキュリティシステムに詳しい最高の鑑識だ」

 三浦が小声で吉永マミを褒めると有安が目を点にする。

「RPGが大好きなゲーマー。その情報は必要か」

 有安が小声で突っ込みを入れると吉永マミが立ち止まった。そこは一畳くらいの広さがある」小さな空間。窓がなく部屋は暗闇に包まれている。その中心が切り抜かれている。その空間を吉永マミが照らすと階段が浮かび上がった。

「なるほど。階段で下に降りることができるということですね」

「ええ。隠し階段じゃないことが少し不満だね。普通は隠し階段だけど」

 吉永マミが顎に手を置きながら呟く。そこに有安が口を挟む。

「吉永マミさん。まさかと思うが隠し通路探検をゲームのように楽しんでいるんではないか」

「そうだよ」

 吉永マミは有安の問いに即答する。それを聞き須藤が呆れた。

「これはゲームじゃなくて捜査。少しは真面目に仕事してください」

 吉永マミが肩を落とすと須藤が懐中電灯で辺りを照らし階段を降りようとした。だが吉永マミと有安は立ち止まり部屋の壁を照らし始める。

「須藤警部。これだと隠し通路の扉が閉まらない。だからこの部屋のどこかにスイッチが隠されている可能性が高い」

 有安が須藤警部に伝えると、吉永マミが壁を照らした。白い壁の中心に緑色のパネルが埋め込まれている。

 吉永マミがそのパネルに近づき触る。だが扉が閉まることはなくパネルが赤色に変わり点滅を始めた。

 吉永マミがパネルから手を離して数十秒が経過した頃赤く点滅したパネルが緑色に変わった。

 そして吉永マミがパネルの周囲を観察しながら呟いた。

「なるほど。テンキーが見当たらないことから部屋の扉の鍵は指紋の可能性が高いね。一度分解しないと断言できないけど」

 吉永マミは一人で納得して階段のある方向まで歩く。それから四人は階段を降りた。それは長い木製の階段だった。暗闇で懐中電灯がないと降りることさえ難しい階段。

 その階段を全て降りた先には一本道が続いていた。その先にはドアが見える。

 四人は周囲を懐中電灯で照らしながら一本道を進む。窓もない暗い一本道。

 そこを進んだ先にある木製のドアを三浦が開けると眩しい太陽の光が暗い空間を照らした。


 四人が懐中電灯のスイッチを切り、周囲を見渡す。この場所は明らかに院長室の真下ではない。すると四人の前を青いゴミ袋をワゴンに乗せたナース服の女が通り過ぎた。

 看護師は軽い登坂を登り右に曲がる。四人がその看護師の後ろを歩くと、第一の殺人現場であるゴミ捨て場に到着した。

 第一の殺人現場は立ち入り禁止になっていない。その場所に看護師がゴミを捨てた。

 その様子を見ていた須藤涼風が警察手帳を見せながら看護師に近づく。

「大分県警の須藤涼風です。ここはゴミ捨て場ですよね。この病院で唯一の」

「そうですよ。それが何か」

「確認です。ありがとうございました」

 須藤涼風が礼を述べると有安が看護師に近づきながれ手を挙げた。

「すみません。そのゴミを乗せていたワゴンはどこにある」

「各病棟にそれぞれ一か所ずつ。合計三か所。汚物処理室の中に置いています」

「因みにそのワゴンは三か所全て同じ物ですか」

「そうですよ」

「ありがとう」

 有安が礼を述べると看護師は空になったワゴンを押しながらゴミ捨て場を後にした。

 

 一方三浦は手帳を取り出しフリーハンドで見取り図を書き込んだ。

「あの隠し通路。院長室に真下に辿り着くと思ったらゴミ捨て場の近くに出るなんて妙だな。ただ階段を降りただけなのに院長室から二百メートル離れた倉庫の近くに出るなんておかしいだろう」

 三浦が思ったことを呟くと有安と須藤の脳裏に仮設が浮かんだ。

「それだったら矢部雄一がこの現場で殺された理由も説明できる」

 有安が顎に手を置きながら呟くと須藤涼風は彼の言葉に耳を傾ける。

「有安君。まさかあなたは私と同じことを考えているのですか」

「多分な。だがその仮説が正しかった場合一つの謎が浮上する。交通事故だ」

「そんなことは関係ないでしょう」

「関係ある。この仮説が正しかったとしたら矢部雄一には比留川病院を訪れる口実が必要だ。その口実を用意するために交通事故を起こすのはおかしい。救急車が来るような事故を起こせば被害者が病院に搬送されるけど、どこの病院に搬送されるかまでは予測不能」

「その場合を考える必要はないでしょう。本日中に受け取らなければならない何かがなければの話ですが。兎に角この推理が成立するとしたら院長室のどこかにあれが隠されているはず。ということで吉永マミさん。院長室に戻って探してください。あなたなら十分もあれば見つかるはずです」

「分かったよ」


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