新発見
昼飯は人材派遣会社近くのファミレス。照り焼きハンバーグ&鶏の唐揚げ。ドリンクバー付き。
食事のあと一時間ちょっとねばるつもりでいたが、ちょうどお昼時。あっという間に店内が立て込んできた。僕が座っていたのは、四人がけのテーブル。スタッフが相席の相談にきたところで店をでた。
人材派遣会社の担当者との約束は三時。それまでどこかで時間をつぶすことにしよう。
信号が変わるのを待ちながら、このあたりの地図を頭の中に広げた。
最初にヒットしたのが、次の信号を左に折れた大型パソコンショップ。
ここ十年、新型パソコンを買おうと思ったことはなかったが、業界の動向には興味があった。僕の情報源は、もっぱらネット検索。
たまには、専門店を覗いてみるのもいいかもしれない。
と思ったとき、僕の指先がほんの一瞬、チリチリした。
あれっ、
僕は思わず自分の手を見つめた。
新聞のチラシのときと同じような感触だった。
でも、あのときはたしか、右手だったような気がしたが……。
念のために、両手の表と裏を確認してみた。
いつもより汗ばんでいるように見えたが、別に変わったところはなさそうだった。
指先から火花が飛ぶのは静電気。でもあれは空気が乾燥しているから起こる現象。もうすぐ梅雨という時期に静電気は関係ないはず。
だとしたら、何だったんだ。今のチリチリは。
そんな自分に、僕は言った。
何をぐじゃぐじゃ考えているんだ、気のせいに決まっているだろう。そんなことより、ほら、さっきから信号は青に変わっているよ。
平日の昼間だというのに、店内は大勢の客で賑わっていた。
そりゃそうだろう。なんといっても立地条件が良い。両隣は大型ディスカウントストアとパチンコ店。駐車場の心配はまったくない。
このパソコンショップが進出してこなければ、僕がデスクトップパソコンを買ったショップは、まだ営業を続けていたかもしれない。いや、オーナの考えが幼すぎたから、いずれにしろ店を畳まなければならない宿命だったはず。
そんなことを考えながら、店内をぶらぶら歩いていたとき、またしてもチリチリが始まった。
今度は右手の指先だった。チリチリ感は途切れることなく続いていた。
痛みを感じるようなものではなかったが、気になった。
指先で何が起きているのだろう。
その場で立ち止まろうとしたところで、待てよと思った。
こんなところで急に立ち止まると、怪しい人間だと勘違いされるかもしれない。
少し考えた僕は、すぐ横の陳列台に積み上げられていた外付けハードディスクを眺めるようなふりをしながら、指先に神経を集中させることにした。
携帯電話のバイブの振動が指先に伝わったのかもしれない。でも、携帯は左腰のウエストポーチの中。念のために左手で押さえてみた。やはり携帯ではなかった。
チリチリ感はずっと続いていたが、指先が振動している感じではなかった。
指先から、何かが流れ出している。そんな感じ。
試しに、両手を軽く握ってみた。流れが弱まったのがはっきり分かった。というより、方向性がなくなったといった方がいいのかもしれない。
もしかすると、
ある考えが浮かんできた。僕はそのアイデアを実行することにした。
まず、軽く握っていた右手の小指から、薬指、中指、人差し指、親指と開いていき、左手に移った。
その動作を三回くりかえしたところで、分かったことが二つあった。
人差し指一本のとき、その流れが最大になり、その流れに引っぱられるように、指先がかすかに動く。