プレゼント
世の中には、色んなコレクターがいるもんだ。
おじさんが集めていたのは、焼酎だった。
芋、麦、米、黒糖。
原料は何でも構わない。でも、原則として、鹿児島県産の焼酎。
「うちの倉庫は、自転車の部品より、焼酎の方が多いねん」
おじさんの話によると、鹿児島県にはおよそ、100の蔵元があるらしい。
「つまり、一つの蔵元から一本ずつ買ったとしても、100本になる。でも、わしが飲むために集めとんと違うで。人様にプレゼントするためなんや。鹿児島には、他にもこんな焼酎もあるということを宣伝する目的もある」
現時点で、あの森伊蔵も数本確保してあるという。
「これは、なかなか手に入らん。当然わしとしても、相手を見ることになる」そこでおじさんは、おばちゃんを見た。そして、同意を得るように言った。「ええやろ」
おばちゃんは、にこっと笑った。
「あたしも、あんたと同じことを考えていたところ」
おじさんは、僕に視線を戻した。
「よかったら、明日またおいで。昼過ぎまでには、用意しておくさかい」
「あのお……」僕は少し考えてから言った。「つまり、立て替えてくださるというわけですね?」
「ちゃう、ちゃう」おじさんは、顔の前で片手を振った。「わしからのプレゼントや」
僕は、おじさんとおばちゃんの顔を見ながら言った。
「立て替えてもらった森伊蔵を、二ヶ月後に返しに来ればいいってことじゃないんですか?」
「なにを固いこと言うてんねん。にいちゃんとこに送ってきた森伊蔵は、にいちゃんのものやがな」
森伊蔵に当たったことで、僕の一日に変化が起きはじめた。
ここ数ヶ月、何の目的もなく過ごしてきたが、しなければならないことが出てきたのだ。
まず、次の日の朝一番に、郵便局に行った。
振込用紙の通信欄に、携帯番号、予約番号などを記入。代金を支払って、郵便局を出たところで、おばちゃんに電話を入れた。
振り込みが終わったことを報告した後、森伊蔵の引き取りを今日ではなく、明日以降にして欲しいと頼んだ。
「東京の友人に送るつもりなんです。せっかくだから、他の特産品も入れてやろうと思ったものですから」
「それは良い考えね」とおばちゃんは言った。「鹿児島には珍しいものがいっぱいあるから、選ぶのはたいへんね」
その言葉に、少し迷った。
Pには、これまで何回か贈り物をしている。
かるかん。春駒。カツオの腹側。さつまあげ。文旦飴に兵六餅など。
これらとダブらないものといえば、黒豚やキビナゴ。でも、独身で外食派のPには似合わない。
この際、おばちゃんに見繕ってもらおうか。
と思ったが、やはり昨夜決めたとおり、自分の目で確かめて選ぶことにした。




