蛇だった竜の気持ち
僕はさっきまで蛇でした。
……でも、今は竜です。
僕の目から流れた水で、人間はびしょぬれです。
「お前……もしかしてちびだったり……」
そう!
そうなの!!
いそいで頭を縦に振ると、風が吹いて人間が飛んで行ってしまいました。
ひっくり返った人間を見ると、泥だらけです。
目をつむって、寝てしまったみたい。
ちょっと口でつついてみましょう。
……。
人間が起きません。
どうしたんでしょう?
僕の方が大きくなったんだから、僕が人間の世話をしないといけないよね?
……。
寝かせておけばいいのかな?
泥も落とした方がいいかも。
さっきまで目から流れてた水は、止まってしまいました。
あっちに水たまりがあるから、連れて行かなくちゃ。
僕はさっきまで蛇でした。
でも、今は竜です。
蛇には足も爪もなかったので、うまく使えません。
そう!!
それに竜は空を飛べるみたいです!!
人間のそばに行こうと思ったら、身体が浮き上がりました!
……足は何のためにあるんだろ?
……。
人間を掴むためかもしれません。
でも上手く使えないので、爪が刺さりそうです。
そっと口にくわえて行きましょう。
口の中がじゃりじゃりします。
水の中に人間を置いたあと口をゆすいでいると、人間が沈んで行くのであわててもう一度くわえました。
目を覚ました人間を、やっと背中に乗せることができました。
しっぽの近くにいるので、飛んでると落としそうです。
もう少し身体を巻き付けてくれないかな。
……。
たてがみに気がつかないのかな?
やっと毛皮ができたのに。
『ふふふ。これからは触り放題だな』
……早く気がつかないかな。