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多々木さんの、肩たたき器  作者: 大原英一
第一話 肩ならし的な事件
6/20

メンタルケア

6 2013/10/01


依頼人クライアントは誰だと思う」

 多々木さんに訊かれたが、オレにはさっぱりだった。それでも、わかりませんという回答だけは避けなくてはいけない。


「……クライモリ本人、ですか」

「ほう。仮にそうだとして、彼が我われになにを頼むというのかね」

「……売れない小説を売るための、アドバイスというか」

 言いながらオレは顔から火が出そうになった。でも、ほかに考えつかないのだし。

「ほう、彼は小説を書いているのか」

「えっ、知らなかったんですか」


 呆気にとられるオレ。そして、しれっと言われた。

「知らないよ。ボクはブログを読んでいないから」


 多々木さんがブログを読まずにオレに丸投げしたことは、まあ想定の範囲だった。だが、ブログの中身が小説であることすら知らずに、なにかしらの依頼を受けることなど可能なのだろうか。

「まあいいや。かりにクライモリが依頼人だとして、彼はうちに費用を払えるのかな。売れていないんだろう?」

「うっ」


 オレはぐうの音も出なかった。が、咄嗟に別の案が浮かんだのでそれを伝えた。

「あっ、わかりました。依頼人は彼の親です。息子がいい歳して働きもせず、実家でくすぶっていることを嘆いて……」

「それでボクに依頼を?」多々木さんは怪訝そうな顔をした。「悪いけど、ボクは道徳心に厚い教師でもメンタルケアの専門家でもない。息子さんを矯正するなんて、できる気がしないしお断りだよ」

 どうやらハズレらしい。もう、お手上げだった。


「なるたけシンプルに考えることだ、ヤマゲン君。誰かがお金を払って、探偵のボクに依頼するんだよ。当然誰かの利益にかかわることだろう」

 多々木さんは続けた。

「利益ってのは、なにも売れない小説を売るとか、人生相談に乗るとかいうことだけじゃないはずだ」


「利益……」

「そう。誰かの利益について考えるなら、不利益についても考えないとね。いまのは、すごいヒントだよ?」

「あっ」


 オレは思わず叫んだ。思い当たるふしがあった。

「クライモリはブログのなかで、某宗教団体のことをあからさまに非難していました。それが団体にとっての不利益ですね!」

 多々木さんが満足そうに頷く。

「正解。さ、ケーキを買ってきたから、お茶にしよう」



 若林さんがお茶を淹れてくれているあいだ、オレは多々木さんに耳打ちした。

「なんだか、若林さんまで残業につきあわせて、申し訳ないです」


「気にしなくていいよ。予定があったら、彼女はとっくに帰っている」多々木さんは笑った。「結局のところ、彼女はすべての案件を文書に残さないといけないから、話に加わってもらったほうが早い」

 そして、

「情報の共有ってのは大事でね。とくにこの少ない人数なら比較的スムーズだ。遠慮は要らないから、キミもどんどん発信してくれていい。五月蝿いくらいに、ね」


 三人分のティーカップを盆に載せて彼女が戻ってきた。

 ケーキをつつきながら彼は話を再開した。

「ヤマゲン君に慣れてもらうために、ちょっと意地悪な質問をしたけど、そろそろ本題に入るとしよう。今度の依頼人は某宗教団体の関係者だ。かりにX氏としよう。X氏の依頼は、ずばりクライモリの居場所を教えてくれ、だ」

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