(9)花嫁とリズム
さて、そんなこんなはありましたが四人は、
「早く、音出そうぜ」
という気持ちが抑えられません。
一週間後にはカイロのライブハウスでステージに立つことになっているのです。
早速近くの音楽スタジオに向けて出発します。それぞれの楽器は事前にそこに送ってありました。
ホテルを出て通りを歩いていると、向こうから何やら軽やかな打楽器の音が近づいてきます。
大きなタンバリンを打ち鳴らす、ガウンのような民族衣装を着た男性を先頭にする、白いウエディングドレスをまとった花嫁の行列でした。
タンバリンの男は、民族古来のリズムを高らかに打ち鳴らし、シンプルなステップを踏み、ゆっくり回転しながら進んでいきます。
少し俯いた花嫁の顔は、ベールに隠れて見えませんでしたが、厳粛な雰囲気を醸し出しています。
恐らく花嫁の両親が、うるんだ眼をして花嫁に寄り添っています。
母親の頬にはアイシャドウが流れた跡が付いていました。父親の目も真っ赤です。
でも、二人とも時々思い出したように笑顔で見つめ合い、手を取り合い、うなずいています。
その周りにいる親族や友人たちの顔は明るく輝いていて、皆嬉しそうです。中にはリズムに合わせて踊っている人もいます。
「トントン、ツクトン、クツント、ク、トトト」
キースがタンバリンのリズムを覚えようとするかのように何度も口で復唱しています。
「トントン、ツクトン、ツベラギアランド」
闘四郎がエアーのベース弾きながら、つぶやきをそのリズムに被せます。
蛍がコード進行を思いつくまま口笛で吹き、ジョッキがそこにメロディーを絡ませます。
三つのピラミッドが頭を覗かせる通りを、四人はそんな風にして花嫁行列の後にどこまでも付いていくのでした。
音楽スタジオはそっちじゃないのに。




