(8)放物線
一方、向かいの部屋の闘四郎とジョッキに一騒動が持ち上がっていました。
こちらの部屋からピラミッドは見えません。隣の安ホテルの窓がすぐ目の前にあります。
眺めだけだと、錦糸町のアパホテルと変わりありません。
部屋に入ってジョッキは直ぐに導尿に取り掛かりました。もう膀胱が破裂寸前だったのです。
ジョッキ専用の60センチもあるケースに入ったカテーテルと洗浄綿と潤滑ゼリーを持ってトイレとバスタブ一体型の浴室に籠ります。
まず、便器の前に立ち、ズボンを膝まで下ろし、長大な物を掴んで尿道口を洗浄綿で拭きます。
そして、潤滑ゼリーを塗ったカテーテルを慣れた手つきで挿入してゆきます。
程なくカテーテルの先っちょから尿が便器に向けて勢い良くほとばしります。
「あー」
ジョッキの口から思わずため息が漏れました。
その時です。
ドンドンドン。
浴室のドアを叩く音がします。
「ジョッキー、まだー? 俺、我慢できないんだけど」
闘四郎は股間を押さえて足踏みをしています。
「えー、今丁度カテーテル入れちゃったところだよ。ちょっと待って」
「どうしよう、俺もう出ちゃうよ」
闘四郎はノブを回してガチャガチャやりますが、鍵が掛かっているので開きません。
ジョッキは半身になってドアの鍵を開けようとしますが手が届きません。尿を出し切るにはまだ結構時間が掛かります。
「早くしてー、早くー」
闘四郎がうなります。
ジョッキは後ろのドアと、カテーテルの先からほとばしる尿を交互に見て、この不可能な状況を打開する解を見つけるべく脳みその回路をフル回転させました。
尿を受ける入れ物でもあれば鍵を開けることが出来るのだが……
しかし、それらしきものは手の届く範囲に見当たらない……
「うー、うー、おっ、おっ」
切羽詰まった闘四郎の唸り声が転調しました。
閃いた!
浴室のドアが開きました。
闘四郎がそこに見たものは……
握った竿を立てて、カテーテルの先から出る放物線を口に受けるジョッキの姿でした。
生ビールやん。
不謹慎にも闘四郎はそう思わずにはいられませんでした。




